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第二十一話

大学の講義を終えてキャンパスのベンチに座ると空を見上げた。


(もう、終わりなのかな…)


あの日、聞かれた返事は未だに返していない。


『どこへ行きたい?』

『どこでもいいよ。ごめん、眠いから今日はこのまま寝よう?』

『…』


あの後、何も話してこなかった。

俊は何を考えていたんだろう?


「荒太ぁ〜!」

「うわぁっ!」


目の前に飛び出してきた顔に驚くとベンチからずり落ちそうになった。


「どうしたんだよ?なんか落ち込んでる?」

「晴翔かよ?びっくりしただろ?」

「ごめんごめん。お詫びにジュース奢ってやろうか?」

「おう!」

「えーっと、無糖の紅茶でいい?」

「いや、隣のいちごミルクがいい。俺さ〜紅茶苦手なんだ。甘くないもの

 って飲めねーんだわ」

「ん!?この前って無糖の紅茶ばっか飲んでなかったっけ?」


晴翔が思い返した時はよく紅茶を飲んでいた気がする。

誕生日の時もいちごのショートと紅茶の組み合わせだった。


「俊が買ってきてくれたから…俺さショートは嫌いじゃねーけど、ケーキなら

 チョコのが甘くて好きなんだけどな〜」

「なんだよそれ?言ったらいいじゃん?俊のやつ、絶対知らねーだろ?」

「…うん。きっと知らないんだろうな〜。俺の事、興味ないもん。」

「はぁ〜だったらなんで付き合ってるんだよ?」


晴翔には身体の関係もあるってバレてるから余計に不思議に思われるかもしれ

なかった。


「少しでもいいから俺の事…見て欲しかったんだけどな〜。」

「だったら、言えばいいだろ?なんでちゃんと伝えようとしねーんだよ?そんな

 の辛くねーか?」

「うん、一緒にいると辛いよ。でも、このままでいいんだ。」

「意味わかんね〜、ならさーいっそ合コンでも行かね?女子と付き合うのもいい

 じゃん?童貞なんだろ?荒太ってさ〜」


意地悪そうに晴翔がいうが、それは丁重にお断りした。


「じゃ〜そろそろ行くわ」

「あぁ、またな〜」


荒太は時計を見ながら次の講義の場所へと向かった。


荒太が行ってから晴翔の前に俊が後ろからこっそりと出てきていた。


「聞いてたんだろ?なんだよあれ…。お前ら何年付き合ってるんだよ?」

「…知らなかった。俺は荒太の事何も知ろうとしてなかったんだな…」


落ち込むように拳を握り締めると帰っていく。


メールがピロンと音がして俊を引き留めた。

差出人を見て駆け出していった。


「新しい恋人でもできたのかよ…だったら荒太をちゃんとフッてやれよ…クソ野郎」


イラつく晴翔の声が後ろからしたが、俊は気にせず呼び出されたカフェへと向かっ

ていったのだった。

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