第二十話
朝起きると頭が痛くてふらふらしながらキッチンへと行くと水を喉に流し込んだ。
「あーー、頭痛い〜〜〜」
「自業自得だろ?飲み過ぎだ。」
「ちゃんと帰ってきてただろ?」
「帰ってきたと…?俺が背負って帰ってきたんだよ。サークルのメンバーにでも聞
いてみるんだな…」
少し不機嫌な俊が食事を用意してくれるとそれを駆け込んだ。
サークルの昨日のメンツに帰りの事を聞くと、誰もが口を揃えて『保護者が連れて
帰った』と言われた。
「マジか〜、記憶にねーわ」
「だろうな〜、酔ってたからな〜。毎回保護者が迎えに来るんだな?友人にお礼言
っとけよ?毎回なんだからな!」
流石に毎回だと、俊も嫌になってしまうかもしれないと思うと少し飲み会の参加を
控えようかと思い始めた。
「やぁ、池上くん。今、ちょっといいかな?」
「なんですか?」
「ちょっと協力してほしい事があるんだよ。やってくれたら単位あげるよ?」
「マジか!やります♪」
内容も聞かずに引き受けたのだった。
夜になって家に帰るとソワソワしたような俊が部屋の中でうろうろとしていた。
「ただいま〜どうしたんだ俊…?」
「いや、なんでもない。バイトは終わったのか?」
「だから帰ってきたんだろ?変なやつー」
帰って来るといつものようにキスをしてキッチンへと向かう。
早く帰った方が食事を作るという決まりを作ったが、どうしても毎回俊に任せ
てしまう。
荒太が不器用だと言うこともあるが、俊の手料理が美味いからだった。
「あのさ〜来週の金曜って講義なかったよな?」
「あぁ、そうだな〜」
「なら、金曜から旅行に行かないか?」
「旅行?なんでまた〜誕生日でもねーし?」
「たまにはいいだろ?もうすぐ俺らも卒業間近だろ?就職するにもゆっくりで
きる時間が取れるのって今くらいじゃん?」
「まぁ、いいけど。」
「どこ行きたい?」
俊は期待したように聞いてくれる。
荒太にはそんな俊の態度が不安にしか思えなかった。
最近はどこかソワソワしていたし、何かメールをよくやり取りしているようだ
った。
誰となのかも言わないし、ただ誤魔化して来る。
もしかしたら恵を探すのを諦めて、彼女でもできたのか?
それで荒太が邪魔になって、別れる前に旅行へ行こうと思い出作りなのだろう
か?
不安になればなるほど、嫌な考えばかりが浮かんでくるのだった。