第十一話
高校は都内の私立高校へと進学した。
荒太の学力はぎりぎりだった為、推薦がもらえず、一般入試で入る事ができた。
「荒太はマジで落ちるかと思ったけどな〜」
「俺だって必死だっつーの!俊は余裕かもしれね〜けど俺にはレベルが高いん
だからな〜!ちゃんと教えてくれよ?」
「分かったって、授業についていける程度には勉強見てやるよ」
「そういえばスポーツ推薦は取らなかったのか?」
「ん〜…」
俊は一瞬黙ると、ニヤッと笑って答えた。
「荒太が落ちるかも知れねーのに?スポーツ推薦取ったら困るだろ?」
と、付け加えた。
うがぁぁーーー!
と叫びながら荷造りをしていた手を止めると俊に飛びかかった。
「そんな事言うと襲っちまうぞ!」
俊の上に馬乗りになると掴みかかる。
少し驚いたような顔を見せたが、すぐに悪戯っぽい笑みに変わる。
「襲ってみろよ?童貞の荒太ちゃん?」
「言ったなぁ〜お仕置きしてやる〜」
そういうと荒太は俊を力任せに押さえつけると唇を重ねた。
一年も付き合ってるというのにキスもしっかりした事はなかった。
ただ重ねるだけの軽いキス。
何度か唇以外にはした事はあるが、ちゃんとするのは初めてだ。
俊がしてこないから、余計に恥ずかしくてできなかった。
今日からは学生寮で一緒に住む事になる。
隣の壁は薄いけどこれくらいなら聞こえる事はない。
そんな軽い気持ちで重ねたはずだった。
いきなり顔を掴まれると引き寄せられる。
角度を変えて唇を塞がれると舌が中へと入ってきた。
「…んっ…んんっっっ!!」
予想外の出来事になすすべもなく、貪られるように何度も噛み付くような荒い
キスをした。
(俊ってこんなキスをするのかよ…)
驚かされたことで、されるがままになっていると俊が耳元で囁く。
「この先もされたいの?」
「ふぇっ…なっ、なっ、何してんだよ!」
荒太は急いで離れると真っ赤になった顔を隠すように部屋を出て行った。
付き合うといったかぎりは覚悟はできていたつもりだった。
いざとなると、びびって逃げてしまった。
「俺…マジでだせーじゃん…」
廊下で反省すると隣の部屋の住人がやってきた。
「こんにちわ〜、隣の部屋の杉浦晴翔です。よろしくな〜」
「池上荒太です、こちらこそ…あれ?一人?」
「あぁ、ルームメイトはいないっぽいから気楽でいいよ。君のところは
ルームメイトがいるんだっけ?大変だな?気まずくなったらこっちく
る?」
「そうだなー、そうなった時はよろしくな!」
「いつでもどうぞ〜、荒太くんでいい?」
「荒太って呼び捨てでいいよ。またな〜」
「うん。またっ!」
隣人は悪い人ではなさそうだった。
この高校はそのまま大学までいけるので、大学受験をする必要がない。
問題さえ起こさなければ、もしくは成績さえ基準値であればそれでいいと
いう校風だった。