第一話
池上荒太は中学2年生になったばかりだ。
幼馴染の植田俊と田口恵とは仲が良く、いつも遊びに行っていた。
「荒太〜ちょっといいか?」
「俊どうした〜?もうすぐ恵も来るからそしたら一緒にマック行こうぜ〜」
「そういうことじゃなくて…俺さ…恵に告白しようと思ってるんだ」
「?…告白?恵は男だろ?それに俊はこの前彼女できたって言ってなかったか?」
「…もう、別れた。やっぱり俺は恵がいい。荒太はそんな俺を軽蔑するか?」
真剣な顔で聞かれると俊を傷つけるような事は言えない。
「そ、そんな事ねーよ。俺らは親友だろ?俊が好きなら性別なんて関係ねーよ!」
「やっぱり荒太に話してよかった〜。きっと荒太なら分かってくれるって思ってたよ」
「あぁ、そうだな…でも、恵にはどーすんだよ?」
「今日言おうと思う。だから頼む!少しだけ二人にしてくれないか?」
「あぁ、わかったよ。俊の為なら任せろって!」
俊の嬉しそうな顔をみると否定なんてできなかった。
いじめられっ子だった恵と仲良くなったのは小学生の時だった。
転校してきて、すぐにガキ大将に目をつけられた。
女の子みたいな見た目のせいか、勘違いしたのが恥ずかったという理由で
イジメの対象にさせられたそうだ。
そこに俊が割り入って止めたのだ。
それ以来、俺も俊も恵とは仲良くなって良く連むようになったのだった。
「あ!ごめんね、遅くなっちゃった。」
「先生に呼ばれてたんだろ?仕方ねーよ」
「そういえばさ、先生からの用事ってなんだったの?」
何の気なしに聞いた荒太に恵は俯くと『なんでもないよ』と返事を返してきた。
「ふ〜ん、まぁいいや、マック行く予定だったけどカラオケ行かね〜?」
「いい、けど…俊くんもそれでいいの?」
「あぁ、俺はどこでもいいよ。恵は嫌だったか?」
「ううん、そんな事ないよ!」
嬉しそうに俊に答える恵を見ると胸が痛くなった。
荒太は明るく振る舞うとカラオケへと向かった。
先に曲を入れると、とにかく盛り上がる曲を歌った。
「あー、喉乾いた〜、ちょっとジュース買ってくるわ」
「おう。」
「あ!僕の曲だ!」
俊に合図を送るとドアの外に出た。
荷物も持ってきた。
このまま二人の成り行きが気になるが、ここにいるのも辛い。
走るように店を出ると家へと駆け込んだ。