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第六話 恵まれた時代

菅野達は涙を流しながら樋口が作った炒飯とわかめスープをあっという間に完食してしまった。


傍から見れば成人男性五人が泣きながら食べているって異様な光景だ。

平成の人間からすれば炒飯とわかめスープを食べて泣くなんて大袈裟だなと思う人もいるだろう


それほど、菅野達の時代は今みたいに栄養満点な食事がなく、充分な食事が取れていない事が分かると同時に恵まれた暮らしが出来ているっという事が改めて感じた。



『辛い思いをしていたのは菅野さん達などの軍人達や一般人なんだ…! 私が泣いていてどうするんだ!』という考えが出た。

流し台に置いた食器を水で洗いながら、頬を伝った一筋の涙を拭う。

食器を置いてあった棚に戻し、人数分の硝子のコップに冷やしておいた麦茶を並々注いで再び居間に戻った。




「お茶です。…あの、どうでしたか? さっきの料理はお口にあったでしょうか?」


「凄く美味かった! 母ちゃん達にも食べさせてやりたい位だ!」

「嗚呼……彼奴らにも食べさせてやりたいな」

「美味しかったよ。麦やアワ、ヒエなどの雑穀が入ってない白米を食べたのは久しぶりだなぁ」




菅野達の目元は泣き過ぎだからか赤く腫れあがっていた

樋口は直ぐにタンスからタオルを取り出し、洗面所で水を濡らし絞ると皆さんに手渡す




「良かったら、これで目元を冷やしてください」

「悪ィ…ありがとな」

「あぁー…冷たくて気持ちいいー…」



樋口は再びタンスから昔、自身の父が使っていた服がそのまましまっていたのでポロシャツとズボン五人分用意し菅野達の前に置いた

昭和初期は着物を着ている人もいたがセーラー服とか学ランなどの洋服もあったから着方は知っているだろうと思った。



「その格好だと、暑そうですので着替え置いておきますね」

「ありがとな。栞ちゃん」


鴛淵は濡れたタオルから目をのぞかせながら、栞にお礼を言った。



「じゃあ、私は洗濯物を取り込まないといけないので庭にいます」



*


冷たいタオルで赤く腫れた目を冷やし終わった所で、樋口が用意してくれた服に其々着替える為、飛行服を脱いだ



「触った事もない生地で出来てるな…この半袖の服」

「一体何で出来てるのだろうか…」



菅野達は半袖の生地を触ったり伸ばしたりしていたりしていた。


触った感じワイシャツみたいに薄くはない、寧ろ分厚い生地で出来ていた。

ワイシャツみたいに肌に吸い付く感じではい。ズボンも涼しくて肌触りもいい



「肌触りがいいな! この半袖!」

「確かに! 着やすくていいですね!」


「着替え終わりましたか?」



洗濯物をカゴに入れて持って来た栞が戻ってきた



「丁度良いよ。寸法も合ってるし!」と武藤は笑顔でそう答える

「明日、買い出しに行くついでに菅野さん達の服も買いますので今日はその服で我慢してください」


「なぁ、栞。この半袖って一体何で出来てるんだ?」


菅野は分厚い生地で出来ている半袖の布地は何で出来てるのかがどうしても気になった為、聞いた。



「その半袖の名前はポロシャツと言いまして素材は綿で出来ています」


「へー! 綿なんだ!」

「綿ならこの分厚さも納得だな」


「でも、何でこの季節でポロシャツというものを着るんだ? 普通この気温だったら薄い生地で出来ている服を着るだろう?」




「ポロシャツという服は今菅野さん達が着ている綿の他にもポリエステルや混紡繊維という素材で作られているものもあります。


今菅野さん達が着ている綿のポロシャツは吸湿性・放湿性に優れています。



ポリエステルが素材のは強度が非常に強く、生地にハリが出ているのが特徴です。後、吸湿性が低いので汗をかいても直ぐに乾くので、スポーツ…運動着に使われています。


そして混紡繊維は綿とポリエステルを合わせた素材で吸湿性・通気性・形状維持などの機能がありますね」




樋口は正座して洗濯物を畳みながら菅野達がわかりやすいように丁寧に教えた。

畳み終えると居間にあるタンスに服などをしまうと、家の中を案内する事になった。



「此処がお風呂でこっちがトイレです。使い方は後で教えますので」



扉を開けたり閉めたりしながら部屋の間取りを教える


「此処の部屋は私の仕事部屋」

「何の仕事してるんだ?」


「服の修理をしているんです」


部屋には業務用のミシンに、アイロン台、色々な模様が入っている布地に裁縫道具

そして、大小関係なく幾つもの段ボールが積まれてあった。




「最後の部屋はあんまり使わないと思いますが…」


樋口の仕事部屋を後にし、次の部屋に向かう。そこの部屋には沢山の本が置いてあった。


ガチャ


「すごい本の数だな!」

「書斎部屋?」



部屋の中心に立派な書斎机が設置してあり、左右にある本棚に置かれている本の著者の所を見ると、芥川龍之介・江戸川乱歩・森鴎外・太宰治・夏目漱石・川端康成・二葉亭四迷・樋口一葉・宮沢賢治など日本で有名な文豪の他にも外国の文豪の本もあった。



(俺が尊敬している文豪の石川啄木の本全てが棚に置いてある…!)


「此処、おじいちゃんの書斎部屋だった部屋なんです。学生時代、よく此処の本を借りて読んでたんです

明治時代から昭和初期の文豪の本や戦後から活躍している文豪の本もありますよ。

暇を持て余した時にどうぞ」



俺らの後に出てきた文豪…

気になる題名もあるし早速読んでみようかな……





「あ、あの…その。こんな俺達の為に…本当にありがとうな栞。」


話すと緊張するほど女性に慣れていない杉田が同い年の女性と話していることに驚きながらも菅野達も改めてお礼を言う。



「なぁ、煙草吸っていいか?」


菅野らは無性に煙草が吸いたい時がある。だが、彼らが煙草とか吸っていると煙たいって言っては来なかったが目で訴えている奴がたまにいた為、家主である樋口に確認を取った


「あ、どうぞ」

「……ん? 何だこれ?? 健康保険証…??」



胸ポケットにしまってある煙草とマッチを取り出そうとしたら、何か出て来た。


出て来たものには、左上に書いてある健康保険証と書かれた青いカードと白い紙には達筆な字でこう書かれていた。

『貴方方に保険証というものを用意しました。後、俺の力で戸籍登録もしておきまたので』



「隊長。それなんですか??」

「さぁな…多分、お前らの胸ポケットにも入ってると思うぞ」


杉さん達は胸ポケットを探ると其々健康保険証が入っていた

俺の力って…あの男か。戸籍を用意してくれたのは有り難いが健康保険証って…なんだ??


「それって保険証じゃないですか」

「保険証って何だ??」




「保険証とは医療保険制度というものに加入していることを示すための証明書です。病院や旅行とかに必要なものなのですよ。


きっかけは、医療を受けられずに亡くなる人が大勢いたんです。この頃は、国民のおよそ3分の1が公的医療保険に未加入のままだった為、1958年に新しい「国民健康保険法」が制定され、1961年に現在の「国民皆保険制度」が完成することになったのです」



(成程…この時代は医療もちゃんとしっかりしてんだなぁ。)と菅野は感心した。


[引用・参考サイト]

〇Wikipedia フリー百科事典


URL: https://ja.m.wikipedia.org/wiki/

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