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第五話 便利な時代

軍人さん達の給料事情は、結構曖昧なのでご了承ください。

「その、テレビというのは何なんだ?」



菅野達は小首を傾げながら聞き返して来た。


樋口は見た方が早いだろうとテーブルの上に置きっぱなしにしてあるリモコンを手に取り、赤い電源ボタンを押すとテレビ画面がパッと明るくなる。

丁度お昼のニュースの時間帯だからニュースキャスターが原稿を読み上げるシーンが映った



「は!? 人が出てきたぞ!!」

「え? えぇ!?」

「どういう仕組みなんだ!?」



菅野達は目を見開き、思いっ切りテレビに食いつくように映っているニュースキャスターをガン見していた。



(…面白いな。昔の人達の反応って)

「なぁなぁ! このテレビ…ってのは、どうやって動いているんだ!?」



樋口は電化製品の仕組みに詳しくはないが、何て説明すればいいのだろうか考えた。

自身にある知識で説明することにした。


「んーっと…ラジオと似た仕組みで映像が此処まで送られているんですかね……?」

「何で疑問形なんだ?」

「正直言って私はそこまで詳しくないですから……」



ラジオは1925年(大正14年)に開発されたモノ。同じ年にラジオ放送が始まったからこの人達が生きている頃からあるものだ。

それに戦闘機や艦隊にも入電で連絡を取り合っていたらしいし、映画で見た感じラジオと似てるなと思っていた。


驚くのも無理はない…テレビの他にも戦後には電気冷蔵庫・電気洗濯機などの家庭電化製品が次々と生産され一般家庭にも普及したからな。



「ラジオと似たようなモノか!!」


「はい。最初にテレビが作られたのは1952年に白黒テレビが発売され、その5年後の1957年には、今使っているカラーテレビが発売されたんです」


「終戦からたった7年で、こんなにも日本が発展してるとは……」



「でも、暮らしが快適になっても公害問題が発生し、自然問題があるのです」


「公害問題とはどんな問題なんですか?」

「公害とは環境基本法において、水質汚濁、大気汚染、土壌汚染、悪臭、騒音、振動、地盤沈下の7つが定められているのです」


「なるほど……」


「ま、いくら生活が楽になっても問題が付き物なら元も子もないな」と鴛淵はそう言う。



すると武藤は人差し指を指しながら「なぁ、栞ちゃんがさっき開けようとしていたあのデカい白い箱はなんなんだ?」


指さす方向には台所に設置してある冷蔵庫だった


「冷蔵庫ですよ」


「「「冷蔵庫!!??」」」

「やっぱり栞ちゃんの家ってお金持ちだよね!?」


「いや、お金持ちじゃないですよ。今は一般家庭にも普通にある家電製品ですから。それに冷蔵庫と言っても貴方方が知っている氷冷蔵庫じゃなくて電気冷蔵庫なんです」


「てことはテレビと一緒で電気を使って動いているのか?」

「その通りです。林さん」



(昔の人達の金銭感覚ってよくわからないなぁ…

てか、この人達って給料とか貰えたのかな?? 貰えてなかったらブラック企業だよね。)




「軍人でしたらそれなりに良い給料が貰えると思いますが」

「給料を貰ってたのは本当に最初だったよ。戦況が悪化してきてからは給料は少なくなったし、殆どの人達は家族に仕送ってたがな。ま、俺もそうだったけど」



お金を軍人達の給料で使うより武器や物資で使った方が国にとって効率だったろうな…と樋口は考える



「でも高かったんだよな…冷蔵庫一台買うんだったら家一軒建てた方が俺はいいかな」とお茶を飲みながら杉田さんは言った


「家一軒!?」

(えぇ――!? そんなに冷蔵庫って高価なモノだったの……)



予想をはるかに上回ってはいた樋口だが、氷も高級品だって事を思い出し杉田の発言に納得した。



「じゃ、じゃあお昼作ってきますので適当にくつろいでください」



樋口は台所に移動しまな板と包丁を用意する。

用意すると冷蔵庫を開けて今日の昼ごはんは何にするのかを考えながら、冷蔵庫に入っている具材や調味料を見ながら頭を悩ませる。


今日から数人分の食事を樋口は作らなくちゃいけなくちゃならない。

別に悪い事ではない。賑やかになりそうだが其々好みもあるから悩むのだ。



樋口はふっと居間でくつろいでいる菅野達を見る。

見たところ体は服越しだがあの時代ではがっしりしている方だ。筋肉はついている方だが、痩せていた。


この人達はいつから白いご飯を食べていないだろうかと栞は考える。

戦時中は今みたいに白米ではなく、雑穀米が主流だった。今みたいに柔らかい米だけ入った雑穀米でなく、大麦などの穀物をご飯に入れてかさ増しにして空腹を凌いでいた。


あの時代の人達は動物性・植物性たんぱく質を食すより主食である米や野菜、野草などを優先して食べていたと言われている。

本当に貧しいとネズミやイナゴにバッタを捕まえていた。





(今日の昼ごはんは白いご飯と卵や肉を使った料理にしよう…何があったかなぁ…)


そうだ炒飯がある! 汁物は、丁度乾燥わかめがある為、わかめスープで決まった。


 献立が決まると、冷蔵庫から卵に使いかけのベーコン、醤油、長ネギ、細かく刻んだ椎茸、だしの素を取り出し調理に取り掛かった。

ベーコンと長ネギは椎茸と同じくらい細かく刻む。その間にフライパンにごま油を引き、温まるまで待つ。

温まったらベーコンとネギ、椎茸を炒める。次に卵と白いご飯を入れ、塩コショウとだしの素を入れ炒める。

最後に醬油と料理酒を入れ炒めたら皿に盛りつけ、完成。



次は汁物のわかめスープ。


先に乾燥わかめを水で戻し水気を切る。長ネギは小口切りにし

鍋の中に水を入れ沸騰させたら、わかめと長ネギを入れて煮る。ひと煮立ちしたらガラスープの素を入れて再び煮る。


出来たらお椀にスープをよそい完成だ



出来上がった炒飯とわかめスープと麦茶を盆に人数分乗せ、居間にあるテーブルまで運んだ。




*


「出来ました」

「なぁ、栞。この料理は何だ?? 見たところ米料理だが……」

「炒め飯と書いて炒飯と呼びます。汁物はわかめスープです 熱いうちに召し上がって下さい」



皆で合掌して”いただきます”と挨拶した。挨拶した後、れんげで炒飯をすくい口に運び咀嚼する


「……! 美味しい!!」



菅野達は夢中で炒飯を口にかき込む。口の中では塩胡椒、醬油が効いてて今まで食べた中で一番美味しいと感じた。米だって雑穀米みたいに固くもなくお粥みたいに柔らかくもない。

彼らは涙が溢れ出てながら樋口が作ってくれた料理を食べた。

そんな彼らを樋口はニコニコと笑いながら見ていた。




あっという間に完食しても目から涙は流れ続けた。

涙声ではあるが、隊長達と一緒に”ごちそうさまでした”と挨拶をする



「お粗末様でした」


 優しい顔した樋口はそう言って俺らが平らげた食器をカチャカチャと音を立てながら片付け流し台まで運んで行った。

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