第三話 出会い
急なのですが
主人公の苗字と章の題名などの設定を少しですが、変えました!
これからもどうぞよろしくお願いします。
*
雲一つもない真っ青な空が広がる5月某日。
「はぁ……はぁ……久々に登るからキツイなぁ」
彼女の名前は樋口 栞。つい最近20歳になったばっかのごく普通の女性だ。
いきなりだが彼女は山に登っている。登山家では無い、健康の為だ。
彼女が住んでいる場所は自然豊かな田舎町。畑や田んぼもあるが、遠く離れた所には大型スーパーやショッピングモール、マンションが建ち並んでいる。
人口は大都会の東京ほど密集しておらず、過疎化している村程人口は少なくはない。
町の人達は皆良い人だし樋口が困っていると助けてくれるし、反対に町の人が困っていたら助けたりする。
人間関係の距離感は良好でとても住みやすい町だ。
よく運動の為に近くの山といっても低い山に登り山中にある無人神社まで行くのが習慣だ。
畑で野菜を育てたりガーデニングをしたりしているが仕事は在宅なので一歩も動かない日もある だから山に登りに行っているのだ。
「ん~…今日は暖かいなぁ…それに今日は風が吹いていて気持ちいいし」
持って来たペットボトルに入っている冷たい水が渇いた喉を伝い、潤してくれる。
(あ゛~…生き返る……)
樋口が無人神社に到着すると、人が数人いた。町の人達も年に一回か二回位しか行かない所で登山家ですら訪れない所なので彼女は珍しいなと感じた。
彼女と石段に座っている彼らとの距離が近くなると、彼女は驚いた。何故なら服装は本とかで見た事がある特攻隊の人達が着ていた飛行服にそっくりだったからだ。
(コスプレか? にしては季節間違え過ぎでしょ…
それじゃあ、映画の撮影? それだったらカメラとかスタッフさんとかがいる筈だし…)
「あ、あの……」
「え!? あ、はい!」
ふと、声を掛けた人が付けているハーネスに縫ってある名札をチラっと見た。
名前には達筆な字で"武藤金義中尉"と名前が書かれている。隣の人の名札見た。左から菅野直大尉、杉田庄一少尉、鴛淵孝大尉、林喜重大尉と書かれている。
名前を見て樋口は驚いた。
何故なら、第二次世界大戦で活躍した海軍の人達の名前だからだ。
「紫電改…」
樋口が紫電改と言う言葉を口に出しており、石段に座っていた男性達は私が言った事が聞き取れたのか、目を見開いて驚いた表情を栞に向ける。
「君、知っているのか!? 紫電改を!!」
「い”っ…」
鴛淵は栞の両肩をがっしりと掴まれた。爪が食い込む程ではないが、男性だからか力は強かった。
「鴛淵さん! 彼女を離してあげてください!」
「あっ…ご、ごめんね! 大丈夫? 痛くない?」
「え、えぇ。まぁ…大丈夫です。あの、良かったら家に行って話しましょうか? お茶出しますので」
暫く跡が残りそうだなぁ~…そう考えながら下山をした。
*
着いた先は、畑がある平屋の日本家屋だ。離れにも日本家屋程ではないが立派な倉庫が建っている。
栞は彼らに部屋を案内されると畳の匂いが懐かしく感じる和室だった。
「適当に座っていて下さい」
そう言われた為、座布団がある場所にそれぞれ座った。
彼女は盆の上には菅野達には馴染みがあるだろうと思い、冷たい日本茶が入った硝子のコップ五つのせて持って来てくれた。
「どうぞ」
樋口は丁寧に菅野達にお茶を出す。光に反射して硝子に入ってある日本茶は綺麗な薄い緑色だった。
「自己紹介が遅れました。初めまして、樋口 栞と申します」
丁寧に俺らに頭を下げる。それに続いて菅野達も会釈ぐらい軽く頭を下げた。
「あの、一体何故あそこの神社に居たんですか?」
そう聞かれた菅野達は今まで起こった事を話した。樋口は黙って話を聞いてくれている
「成程…それでさっきの神社にいたんですか…」
(きっと信用なんかしてねぇだろうな…非現実的な話だし)
「わかりました。貴方方を信用します」
「「「!!??」」」
「な、何で……」
「…どうして信じてくれるんだ? 俺達が嘘を付いている可能性だってあるだろう」
「仕草ですかね…」
「「「仕草?」」」
「はい。人間は嘘を付いている時は相手の目を合わせたりしないし、話題を逸らそうとするのです。
でも、貴方達は私と話していても全く目を逸らさなかった。嘘は付いていなし信用しようと思ったのですよ」
樋口が洞察力に優れている事に驚きながらも自身に信じられない出来事を真剣に聞いてくれてしかも、信用してくれる彼女に菅野達は少し感動を覚えた。
「もし良かったらですが、今日から此処に住みませんか?」
「「「え…??」」」
「空き部屋は沢山あるので、皆さん一人一部屋ずつ使えますし 畑仕事や重い荷物を持つのも手伝ってくれる人が欲しかったですし…それから……」
「ちょ…ちょっと待って! 俺達を此処に住ませてくれるって言ってるのは本当に有難いんだが家族とかは大丈夫なの!?」
「家族はいません。この家は私の事を育ててくれた祖父母が住んでいたモノで、思い出がいっぱい詰まった家なんです。
それに…私一人で寂しかったですし、衣食住もしっかりしていますよ。」
家族はいないとの言葉に菅野達は少し悲しそうな表情をした。彼らの家族は生きてはいたが自分達は親より先に逝ってしまった事に申し訳ない気持ちが再びこみ上げて来た。
仲間にも樋口みたいに親がいないという人は何人もいたが、同感は出来なく何にも言えない時があった事を思い出した。
菅野は隣に座っている林、杉田、武藤に鴛淵と目を合わせるとどうやら皆は菅野と同じ意見を持ってるのが分かった。
彼らは樋口の優しさに甘え、此処に住むことに決めた。
「改めて、俺の名前は杉田庄一です。これから宜しく頼みます。栞!」
「俺は武藤金義です。お世話になります! 栞ちゃん」
「俺は鴛淵孝。宜しくな! 栞ちゃん!」
「私は林喜重です。栞さん宜しくお願いします。」
「俺の名前は菅野直。これからも宜しくな! 栞!」
「はい。これから宜しくお願いします」