表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/128

第54話



「おっ……?」


 なんて気楽に構えていたら。

 あっというまに宙ぶらりん。

 俺が。


「ちょっ……ま、魔王おおおーーーーーっ!?」


「おっとっと。これはびっくり」


 女王ともなると、俺にも手を出してくるのか。

 知らないうちに足に触手……もう触手でいいや。

 それが巻きついていて、俺をぶんぶかぶんぶか振りたくってくれている。


「お~お~お、視界がワイルド」


「だ、だ、大丈夫なの!? 大丈夫なのー!?」


「パワフルな子どもにもてあそばれる人形って、こういう気持ちなんかな?」


「知らないわよ!? いやまあそんだけしゃべれりゃ大丈夫よね!?」


「うむ。焦ることはないぞ。しっかり戦ってくれ」


「え、ええ……! ……っ……」


 む……?

 どうしたイールギット。

 額に汗がうかがえる……


 さっきまで、あれほど駆け回り、跳ね回り、おまけに俺へのツッコみまでこなして、それでもスマートなたたずまいだったのに。

 視線が定まっていないぞ?


「近づかなきゃ……でもそもそも狙いどころが高い! 頭を下げさせないと……!」


「ふむ……」


「動物なら脚を狙うとこだけど、効果があるとは思えない……イチかバチか……!」


「イールギット。落ち着け」


「いくわよ……!」


 両目を大きく見開いて、イールギットが走った。

 横に。


 女王の繰り出す触手をかわして、森際の木に突撃していく。

 おいまて。

 そこにも1株、フラワーモンスターがいるぞ!?


「<テイム>ッ!」


 イールギットに指さされ、子株がぴたりと動きを止めた。

 テイムがかかりづらい。手こずっている。

 しかしそれでも、


「<ラオネルド>!」


 さらなる力押しに、子株の動きが止まった。

 瞬間的に力を増幅し、強引にテイムを押し通すスキルだ。

 火事場の馬鹿力としては使えるが、持続力がないので耐えてくる強敵相手には分が悪い。


 子株の触手が、イールギットにのびて――

 それを足場に、イールギットが飛び乗った。

 テイム成功したか!


「うおおおおおおお!」


『シャギャアアアアアアアア!』


 触手が空中高く伸び上がる。

 イールギットがそのまま、身を投げ出すようにして、女王フラワーを指さした。


「<テイム>ッ!」


 どわんっ、と薄い木の板に重たい物をぶつけたような音。

 両者のあいだの空間が、力と力のせめぎ合いに、ねじれるようにたわんで――


 バチンッ!


 と衝撃をともなって弾けた。

 これは。


「ぎゃんっ!?」


 地面に落っこちて、イールギットが野性味豊かな悲鳴をあげる。

 そう、失敗だ。

 相手もふらついてはいるが、力が空中で弾けて、入っていかなかった。


 余波で子株へのテイムも解けているようだ。

 もう1回、できるか……?


「く、くそっ……! あきらめないわよ……!」


「なぁにをとろとろ……」


 背後からの声に、イールギットが身構えて振り向く。

 そのさらに後ろに回りこんだ彼女(・・)が、イールギットの腰にガシッと両腕を回した。


「やってんのよ!」


「ちょっ、アンタっ、待っ――」


「そおらいけえ!!」


 ぶんっ


 と反り投げの要領で、イールギットが天高く放り投げられる。

 すごいな。

 闇の精霊はこんな技も持ってたのか、マロネ。


「ふぎゃっ!?」


『シャゲッ!?』


 ぼてっ、とイールギットが落下したのは、女王フラワーの花びらの上。

 状況がつかめないのか、両者しばしの沈黙。

 もぞもぞと、イールギットが思いのほか安産型のおしりをふりふり、花の上で安定を模索して……


「<テイム>ッ!!」


 足下を指さし、スキルを敢行した。

 じん、としたしびれのようなものが、女王フラワーの表面を伝わってゆくのがわかる。

 距離がよかったのか、なんらかのツボをとらえたのか。


『シャ……ギ、ギギ……』


「っし!」


 イールギットの完勝だった。




お読みくださり、ありがとうございます。


次は1/7、19時ごろの更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ