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第42話



 1夜明けて。

 俺は、謁見の間に匹敵するほどの広さをもつ食堂で、朝食をいただいていた。


 別に1月や2月食わんでも、体調的には問題ないんだがな。

 朝昼晩と食事することは、生活リズムを保つのにいい。

 味を楽しむのも好きだ。

 特にナスビ入りのクリームシチューなど大好きだな!


「ところで……イールギットは呼んでないのか?」


 機能的とは思えない極縦長テーブルについているのは、俺とアリーシャだけ。

 あとは給仕役のマロネ(メイド服)しかこの場にはいないが、そのマロネが「ハア?」と臣下らしからぬ返事をこぼした。


「呼んでるわけないじゃないですか。あいつはゼルス様を殺しに来たんですよ?」


「そりゃそうだが、まあほら、俺がそうしろって言って送り出したわけだしな? いいじゃないか」


「よくないでぃす」


「今はどこなんだ? イールギットは」


「地下牢でぃす」


「……地下室でなく?」


「でぃす」


「おいおい。まるで罪人だな、かわいそうに!」


「罪人でぃす。咎人(とがびと)でぃす。このマロネが直々にゴーモンしてやるでぃす」


「ンまぁこの子ったら!?」


「宙づりにして、すっぱだかにひんむいて、エエ音のするムチでピッシャンピッシャンやってやるでぃす! そのあとは女体に飢えたスレイプニルの群れにでも放りこみ――」


「テイムされるぞ」


「うわくっそアイツめんどくさっ!?」


「はっはっはっ、マロネは意地悪だなあ。ま、イールギットとは馬が合わないのも、知ってはいるが」


 違います、とマロネの頬がぷくっとふくれた。

 メイド服の効果か、いつにも増してあざとい。

 かわいいのみならず、裏がなくても疑いたくなるタイプのあざとさだな。


「確かにアイツがこの城で修行してたとき、いろいろありはしましたよ? でもそれは大したことじゃないです」


「そうなのか?」


「はい。たかだか、廊下ですれ違うたびにちょっと蹴り合ったりとか」


「ふむ」


「修行相手の魔物のグレードこっそり上げといたら、精霊封じの護符でトイレに閉じ込められたりとか」


「ふ、む……」


「互いのごはんに劇物仕込むのが日常茶飯事になってたりとか、その程度ですから」


「待って。そんな後ろ暗いバイオレンスが繰り広げられてたのに、俺ぜんぜん気づいてなかったんだけど」


 魔王いささかショックな心地。

 我ながら情けない……もっと部下たちのことにも心を配らねば。


「まあ確かに、ゼルス様に気づかれたら負け、みたいなところもありましたね」


「利用されてすらいる……魔王とはいったい……」


「でもそもそも、今のアイツは、前のダクっちとも違います」


「ふむ?」


「ダクっちは、勇者パーティから追放されたことを認めて、いわば帰ってきました。イールギットは今のところ、それについて語りません。我々の仲間に戻ったわけではないので、捕らえておくのは当然かと」


「なるほど……?」


 そう言われるとな……

 しかし。


「イールギットほどのテイマー、勇者として迎えられなかったとは思えん。なぜ話してくれないんだ……?」


「ですからそのへんをカラダに聞いてやるんじゃないですかあゲヒヒゲヒヒヒヒ」


「どう思う、アリーシャ?」


 たいへん美しく朝食を食べ終えていたアリーシャが、魔王城自慢のコーヒーをたしなみながら目を伏せた。


「わたしには、なんとも……ですが、昨日のあの戦いぶり。誇り高く、また気位も高そうなお方と見ました」


「ああ。イールギットはがんばり屋さんだぞ! アリーシャにも負けないくらいだ」


「恐れ入ります。であればやはり、話せないか……話したくないのではないでしょうか。魔王様のおっしゃる通り、まわりが放っておく力とは思えません」


 そうだろうそうだろう。

 やはり、弟子をほめられるとうれしくなってしまうな。


「しかし、まあ……そこを明らかにしてもらえない限り、客人扱いは無理か……?」


「このマロネの目が黒いうちはゆるしませんねえ! ヤツの晩メシはそこらの草のゾーキン汁スープです!」


「陰湿な姑かおまえは。わかった! 俺が話を聞いてみよう」


「えぇ~~~」


「そんな顔するな、発情しそこねたオークか。この朝ごはんも持っていってやろう。アリーシャも来るか?」


 お供いたします、とアリーシャが立ち上がる。

 よし。

 みんなでイールギットの獄中見舞いといこう!


「犯罪者の家族面会みたいですね。マロネは胸がすっとします、ふひひひ」


 おまえ以上に悪魔的性格してるやつ、俺知らんわ。



お読みくださり、ありがとうございます。


次は12/8、19時ごろの更新です。

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