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第39話



 大見得を切ってくれたその少女。

 動きやすそうな旅装の上に、裏腹にゴツい革鎧。

 ……この特徴的なシルエットも……いとけないながら凜々しい眼差しを縁取る桃色のロングヘアも。

 見忘れるものか。


 我が弟子よ……!

 よくぞ我が前に戻ってきてくれた!

 というか!


「おまえも1人か……」


「は? なんですって?」


「いや。なんでもない」


 こっちのことだ。

 少女はもう、俺の前に立った。

 それまでのことがどうであれ、今思いをはせるのは詮無きこと……


 とはいえ。

 とはいえ!

 長旅ご苦労だったなあ~!


 修行してきたんだな! いっぱいしてきたんだな!

 わかるぞ、そのたたずまいを見れば。

 隙のない……いや。

 隙があるように見せている構え。

 パッと見、武器も備えていないが、そうじゃない。


 自分自身を武器としてきたがゆえだ。

 研ぎ澄まされている。

 今日このときのために!


「ゼルス様」


「む?」


「ここはこのマロネにおまかせを」


 俺と少女とのあいだに、金色のツインテがずいっと割って入る。

 険悪な目つきで、少女を正面からにらみつけているようだ。


 俺の()だぞ、といつもなら叱るところだが……

 まあ、今回ばかりは、わかってたよ。

 こうもなるわな。


「お(んま)さん連れたメスガキ1匹、のこのこ入りこんで来ていいところじゃないんだよ~ここは? 帰れ帰れ」


「あんたに用はないわ、邪魔よ。もっとも、ちっちゃすぎて大して邪魔でもないけど」


「んだとコラア!? オメーに言えたセリフかよ!?」


「あらおかしいわ、声はすれども姿は見えず。こだまかしら」


「ふざけんなよ!? 小指の先だけ背で勝ってたからって! マロネだってあれから背ぇのびたんだからね!」


「うそつくんじゃないわよ、闇の精霊が身長のびるかっ! あたしのほうこそめっちゃのびたし! 昔のあたしとはもう違うし!」


「はいうそー! そっちこそうそー! 20代もなかばすぎた見せかけロリババアがのばせるのは髪とツメと結婚の予定だけー!」


「ぶっ殺すぞ!?」


「やってみろやあ!?」


 あの。

 なんかその、子どものケンカみたいなノリになっちゃってるんだけど。

 見た目的にももう、完全におもちゃとか取り合ってる雰囲気だし。


「マロネはとってもやさしいからねえ! アンタをここで伝説にしてやるよ!」

「ハア?」

「1人でのこのこ魔王城まで来て! 魔王様と戦うどころか、指1本触れることもできず!」


 じわりと、マロネの周囲の空間がゆがむ。

 いや。

 彼女の体が闇の粒子になって、溶けていっているのだ。


「部下にやられて泣きながら逃げ帰った、アホの伝説になあ!!」


「ザコにかまってるひまは――」


 少女が、革鎧のふところに両手をつっこむ。


「ないのよッ! 出でよ<ライトニングゴースト>!!」


「ベルスタンッ!!」


 マロネの放ったスキルを、少女はよけようともしなかった。

 彼女が足下に叩きつけ、砕け散ったクリスタルから、オレンジ色の強い光が人型となって湧き上がる。


「ぬっ……!?」


 マロネのスキルは、その光に吸収されてしまった。

 ほー。

 これはなかなか、珍しい……


「光の死霊!? 趣味わるっ! 妙なもん使役してんじゃねーわよ!」


「闇の精霊が言うな!? やっちゃえ<ライトニングゴースト>!」


 キィエエエエ、と甲高い雄叫びをあげ、ゴーストがマロネに突進する。

 噛みつかれる直前、マロネの姿が闇に消えた。

 真っ黒い粒が千々に散り――

 ターゲットを見失ったゴーストが、おろおろと周囲を見回した直後。


「ベルハイウェーブ!!」


 上空から現れたマロネが、渦巻く衝撃波を叩きつけた。

 砕け散ったゴーストには目もくれず、マロネはすべるように移動する。


 着地の慣性すらまるで感じさせない、精霊ならではの戦闘機動。

 おまけに……


「そ~れお家芸っ!」


 にやにや笑うマロネの顔が、尾を引くように増殖した。

 分身。

 もちろん本物は1体だけだが、人間や普通の魔族がやるより、精霊の分身は見切りづらい。


「「「きゃはははははは! タコ殴りにしてやるう~!」」」


 うわこいつはたから見ててもうぜえええ!

 さすがに増えすぎだろ、20人ぐらいで同時に笑うんじゃねえ!


 だが。

 マロネよ。

 光の死霊を瞬殺した手際は見事だが、ひとつ見落としてないか?

 くだんの少女はさっき、両手を(・・・)ふところに入れていた、と思うんだがな。




お読みくださり、ありがとうございます。


次は12/2、19時ごろの更新です。

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