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第16話



 人間流のひまつぶしといえば!

 酒!

 酒!

 しかるのちに酒!


 今日は酒場でパーリナ~イ!

 地元の酒豪と飲み比べだあー!


「ゼルスン、だったな?」


 そう声をかけられたのは、荷物を置いた宿屋から1歩出たところだった。

 目の前には金髪長身の男。

 それなり以上ににぎわう夕刻の人通りをものともせず、道のどまんなかに堂々と仁王立ちしている。

 ……まあ……誰なのかは、そりゃわかるが。

 えらくまた直球で来たものだな?


「どちら様でしょう?」


 しれっ、と無表情で言い放つアリーシャが頼もしい。

 当然、彼女も男の氏素性を把握している。


「私はあやしい者ではない」


 まあ、確かに。

 神官服脱いでアンダーアーマーだけの今の俺のほうが、たぶん100倍あやしい。

 着替えめんどくせーんだもんよ。このカッコ涼しいし。


「私の名はファレンス。王国公認冒険者、つまりは勇者資格を持っている冒険者だ。Sランク剣士としてパーティを組んでいる」


「勇者様ですか。なんと。これはびっくり」


「ふん。驚くようなことではない……いやまてきみ、驚いているふうにも見えないな? いまひとつ」


 やめろっ。

 演技力については触れてくれるなっ。

 アリーシャ泣いちゃうかもしれないだろ!

 いやまあ1回、彼女の泣き顔は見てみたいものではあるが。


「これはこれは。半日ぶりかな?」


 ボロが出る前にアリーシャと交代する。

 勇者――ファレンスは、にっと口元で笑った。


「やはり気づいていたか。ただ者ではないな、ゼルスン神官」


「ゼルスンでいいさ、勇者殿。何か用かい?」


「ああ、用だとも。きみに用だ。単刀直入に、結論から言おう。……よろこびたまえ」


 ファレンスは両手を広げ、夕暮れをバックに高々と声を張り上げた。


「きみには、私のパーティに参加する資格がある!!」


 …………。


 えー……と。


 これはー……1本釣り成功(・・・・・・)、ということで、いい……んだよな?

 なんか、その。

 思ってたのと違う感じで来られたもんで、ちょっと。


「ふ……」


 棒立ちしたままの俺に、ファレンスはなぜか満足げな顔で両手を下ろした。


「よろこびのあまり、声も出ないようだな。思ったより素直な性格のようで助かる。失礼ながら、もっとひねくれ者かと思っていたよ」


「え……あー……それは?」


「昼間のステータス登録、あれには驚かされた。きみは最初から、私に狙いを定めていたな?」


「ほう」


「単に4枚を反応させ、Sクラスの実力を示しただけじゃない。アレは見た目よりもはるかに難しい技術だ……内側の魔法陣を反応させずに、外側にだけ力を浸透させる。実に鮮やかだった」


 ふふふ。

 さすがは勇者。わかってるじゃあないか。

 俺があのとき、どれほどスゴイことをやってのけたか……


「そしてそれを即座に見切ったこの私も、やはり鮮やか……」


 あれ?

 んん?

 なにこいつ。

 なんで空見てうっとりしてんの。


「きみはただのSクラス冒険者ではない!」


 うおっ。こっち向いた。

 自信満々の笑顔が輝いてる。

 なんだ、どういうスキルだこれ。


「うれしかろう! 私にそれを見切ってもらえて!」


「え、あ、ああ……確かにまあ、それを狙ってやったんだが……」


「うむ? なにを狙ったって?」


「ああいやいや別に――」


「わかっているさ! この私には!」


「話聞いて?」


「きみは言っていたな! できるだけ良いパーティに見初められたいものだと!」


「ぜんぜん聞いてないわけじゃないのかよめんどくせーな」


「良いパーティの中の良いパーティ! すなわち国家公認パーティ! それは――私のパーティのことだッ!!」


「せめて声ちょっと小さくしてくださいお願いします」


 徐々に大きくなっていく周りのざわざわが気になるの。

 魔王ドキドキしちゃう。



お読みくださり、ありがとうございます。


次は11/21、19時ごろの更新です。

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