魔族と宝珠
「あれっ?」
転移すると、そこにはすでに珠はなかった。
だがよく見ると、珠があった場所の近くに足跡があった。数は・・・二人かな?
たぶん誰かが持ち去ったんだろうけど、そうなるとさっきの氾濫はその誰かの仕業なんだろうか。
「とりあえず追ってみよう『追跡』」
ここで考えていたって仕方がないので、追跡のスキルを発動する。
すると、先程の足跡が淡く発光する。ちなみにこれは実際に発光しているわけではなく、発動者にそう見えるというだけであるらしい。
これによると、足跡は街の正反対の森へと続いている。
僕はそれを追って森の奥へと足を進めた。
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「ここ・・・かな?」
あれから森を進むこと約5分、それは洞窟へと続いていた。
一見するとただの洞窟だが、奥から妙な魔力を感じる。通常の魔力よりも濃く、わずかに闇属性に染まっている。
ゆっくりと洞窟を進む。辺りは暗闇なので『光源』の魔法を使う。
進んで行くにつれ、奥にいる気配がはっきりと分かってくる。一人は<人族>、もう一人は・・<魔族>。
魔族の方の魔力は、この前アリーネさんが暴走した場所に残っていた魔力と一致する。
『追跡』の効果が切れる、目的に到着した証だ。
「なんだ?その様は」
「・・・おい、あれはどういうことだ。あんな魔法を使える人間がいっるなんてきいてねえぞ!」
気配を殺しながら近づくと、何やら言い争っていた。
「オレはなぁ、あのクソみてぇな人間どもを皆殺しにできるって言う条件で『災厄の宝珠』を貸してやったんだぞ!だが実際はどうだ、虫の一匹も殺せやしねぇ!」
魔族の男が人族の男に向かって叫ぶ。
「何のことだ?今あの街には最大でもAランクの者しかいないはずだが」
あー、これはこいつらが犯人で確定っぽいね。
「動くな、そこまでだ!」
ドラマの刑事よろしく声を上げる。一度は言ってみたかったんだよね、これ。
「「・・・なんだ貴様は(てめぇは)」」
あれー反応が薄い。
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いやー、個人的には「「なっ、なに!?」」か、「「だっ、誰だ」」ぐらいは反応してはして欲しっかったんだけど、冷静に考えれば普通はこんな反応である。
「闇よ、敵の自由を奪え、『拘束』」
「串刺しにしろ、『ダークランス』!」
などと考えている間に、人族と魔族の二人が魔法を放ってくる。でも、
「少し遅すぎません?」
二人の魔法が放たれるよりも前に、僕は既に二人の背後へと回っていた。
「なっ、闇よ、矢となりて、」
「させないよ、『絶対捕縛の鎖』」
驚きながらも人族の男が魔法を唱えようとするが、それよりも先に神様でも3秒は動けない拘束魔法を発動する。
「『スタンボルト』」
「ガッ!」
万が一を考慮して、動けなくなった男を気絶させる、まずは一人。
「てっ、てめぇ!」
続いて魔族の男が殴りかかってくる、僕はその腕をつかみ、背負い投げの要領で投げる。
「カハッ!」
魔族の男は受け身も取れず頭を打ち付ける。・・・やっぱり弱いな、たぶん下級魔族かな?
魔族の男は今ので気絶したようなので、腰に下げてあった袋の中をあさらせてもらう。
「さてとあの珠は・・・あった!」
話を聞くからにこれは『災厄の宝珠』という何やら物騒な物らしいので、壊した方が良いだろう、なんか呪いの力も感じるし。
「『召喚・聖王槍』」
そう唱えると足下に魔方陣が出現し、そこから金色のオーラを纏う白槍が出現する。
『魔具生成』魔力から武器や防具を生み出す魔法で、一度生み出した物は以後召喚することができる。さっきの『星神弓』もこれによって生み出した物である。
「さて、やりますか」
今回イメージするのは竜巻だ、それを槍に纏わせ、ドリルのようにする事で貫通力を上げる。
「『風神・螺旋槍』」
『ガガガガガガァン!』
魔力を解放し、槍をくり出す。
あたりには暴風が吹き荒れ、洞窟は跡形もなく消し飛んだ。
人族と魔族の男は、空の遙か彼方まで吹き飛んだ、ヤベッ。
『災厄の宝珠』は一瞬だけ抵抗したが、1秒ごには砕け散った。
風が収まった時には辺りは荒野へと変わったのだった。
こんにちは、トカイナカです。
朝起きたらでかい口内炎ができていました。
痛いです