ただの弓ですよ?
『氾濫』
魔物が一斉に異動する現象で、原因としては自然災害による地形変動や魔物同士の間で大きな縄張りの変動が起きることがあげられる。
「だが、そのどちら、ここ最近では起こってない」
アリーネさんが走りながら言う。僕もスキル『鷹の目』と『千里眼』を使い、街周辺の森や山を調べてみるが、見えたのは魔物達の波だけで、そのどちらの痕跡も見つけられなかった。けど・・・
「・・・何であれがここに!?」
「あれ?」
「あっ、いやなんでもない」
魔物たちが向かっている方向とは全くの逆方向に、紫色の珠を見つける。
サイズはバスケットボールくらいで、ガラスの様な見た目の珠である。
「やっぱり!」
今度はアリーネさんに気づかれないようこっそりつぶやく。
しばらく珠を見ていると突如珠が発光し、光が収まるとあたりには十数匹の魔物が出現した。
あれと似たものを神界でも見たことがある。あれは確か神界に来たばかりの頃、創造様に「「何はともあれ、まずはレベル上げからじゃな」という言葉と供に渡され・・・そこから先は地獄だった。1分ごとに50匹は魔物が出現し、こちらのレベルが上がるごとに相手も強くなると言う鬼畜試用。あっ、思い出しただけで鳥肌が。
「おっ、おい大丈夫か?」
おっと、心配されてしまった。
「大丈夫ですよアリーネさん。あのぐらいであればなんとかなりそうです」
「・・・は?」
数は結構いるけど、一匹一匹はだいぶ弱いみたいだし。さっさとやっちゃいますか。
「『召喚・星神弓』!」
僕は立ち止まると、一つの弓を召喚する。僕はそれを手に取り、魔力で矢を生み出す。そこに、流星群をイメージしながら魔力を練り上げる。
「えっ、ちょっ、なんだそれは!?」
「何って、弓を使った簡単な魔法ですけど?」
「そんなわけあるか---!!」
アリーネさんが何やら叫んでいるけど、これ練り終わったら早く打たないと霧散してしまうので今は後回しだ。
「『流星秘射・五月雨』」
刹那、放たれた矢が無数に分裂し魔物達とそれを呼び出す珠に降り注ぐ。
『ドガガガガガガガガガガ・・・・・・・・・・』
硬い皮膚を持つ魔物も、人の数十倍の速さを持つ魔物も、断末魔の叫び声を上げる間もなく絶命していく。
万を超える魔物の群れは、立った一瞬で絶滅した。
「えー、嘘ぉ」
あの猛攻を食らって尚、例の珠は無傷だった。
「おいジン!なんだ今のは!?」
どうやらアリーネさんは今の魔法を初めて見たようだ。まぁ威力は普通だけど、流星群をモチーフにした魔法は珍しいのかな?
「あー、それは後で説明するのでちょっと待っててください」
ひとまずあの珠をなんとかしないと魔物が増える一方なので、とりあえずその場所まで『転移』を使って移動する。
そのときアリーネさんが驚いていたのはきっと気のせいだろう。
皆さんお久しぶりです。個人的な事情で投稿がかなりおくれてしまいました。これからは元に戻ると思うので、どうか応援よろしくお願いします。