出合い
「では、こちらが買い取り金額となります」。
「へー、結構売れたな」。
渡された袋の中には、金貨が15枚入っており、日本円でいうと150万円ぐらいある。確か、この世界の一般的な宿屋の料金が一週間で1万Gぐらいらしいので、かなりの大金だ。しかし宿代は稼げたが、せっかく冒険者になった訳だし、一度は依頼を受けてみたい。とりあえず、E、Fランクの依頼を見てみると、
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薬草採集 ランクF 報酬:一束(十二本)600G
ゴブリン討伐 ランクE 報酬:五匹1000G
コボルト討伐 ランクE 報酬:五匹1200G
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などである。ゴブリンにコボルトか・・・神界の本にはザコとしか載ってなかったからな、多分相当弱いんだろう。ひとまず、報酬の高いコボルト討伐を受注する。
「はい、コボルト討伐ですね。コボルトは、Eランクの中でも素早い魔物なので、注意してください。まぁ、ソニックバードを倒せたなら大丈夫でしょうけど(ボソッ)」。
最後の方はよく聞き取れなかったが、とりあえず注意すれば大丈夫だろう。そう思い、僕はコボルトが生息するという東の森へと向かった。
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「グギャァ!」
「よっと、」
コボルトAが爪を振り上げながら襲いかかる、それを左に避け、すれ違い様に手刀で首を一閃。
「ゲギャ!・・・ギャ?」
背後から迫るコボルトBの胴体を、振り返り様に一閃。
「グッ、グギャァァ!」
「『ウィンドカッター』」
最後に逃げようとするコボルトCの背中に風の刃を放つ。
「さて、こんなもんか」。
あれから30分後、とりあえずコボルトを倒しまくり、『異空庫』へと入れていった。しかしどれも弱すぎというか、かなり拍子抜けだった。
小指で突つけば弾け飛ぶし、スピードもメチャクチャ遅かった。まぁ、楽だったし良しとするか。
「さてと、帰りますかって、うぁぁぁぁ!」。
街に帰ろうとすると、突然半径5メートルほどの火球が飛んで来たので慌ててかわす。飛んで来た方向へと行ってみると、そこには一匹の赤竜と、プラチナブロンドの髪を二つにまとめた、一人の少女がいた。
「アリーネちゃん!私です!ルミアです、目を覚ましてください!」。
「ガァァァァァァァァァァァァ!」。
どうやらあの少女はルミアと言うらしい、しかし、アリーネとはあの竜の名前だろうか?ひとまず『鑑定』を使用する。
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ルミア 種族:人族
年齢:14 性別:女 ランク:C
レベル:26
HP:124/530 MP:120/320
攻撃:220 防御:200
魔攻:510 魔防:320
素早さ:310 運:350
スキル: 炎魔法Lv3 水魔法Lv3 風魔法Lv4 補助魔法Lv2
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アリーネ・エノレア 種族:竜人族
年齢:17 性別:女 状態:暴走 ランク:B
レベル:31
HP:961/800(1020) MP:500/400(620)
攻撃:720(1200) 防御:450(820)
魔攻:500(790) 魔防:300(800)
素早さ:420(590) 運:400(520)
スキル:身体強化(中) 炎魔法Lv2 槍術Lv5 竜化Lv1
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竜化:竜人族の1割が使用可能なスキル、竜化中は全ステータスアップ
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暴走:状態異常の一つ、暴走中は理性を失うが、攻撃、魔攻が上昇する
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なるほど、あの赤竜は竜人族のアリーネさんという女性が、竜化中に暴走したって訳か。とりあえず助けた方がいいよな。
「すみませーん、大丈夫ですかー?」。
「うぁ!?一体どこからって大丈夫じゃありませんよ!!」。
「グォォォォォォォォォォ!」。
「よっと」。
赤竜、もといアリーネさんが爪を振り下ろして来たので片手で受け止める。
「グォォォ!?」。
「えぇ!?」。
さてと、とりあえず暴走さえ解除すればなんとかなりそうだし、さっさっとやっちゃいますか。
「『リカバー・ヒール』!」。
『リカバー・ヒール』、神界で治癒神様に教わった魔法で、HPと状態異常を同時に回復させる事ができる魔法だ。
「ガァァァァァァァァ!」。
突如竜化したしたアリーネさんの体が光りだし、少しづつしぼんでいき、人の形になっていった。
「うん?私は一体・・・」。
「アリーネちゃん!」。
光りが消えると、そこには赤い髪をした女性が横たわっていた。
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「今回の件は、本当に感謝している」。
「アリーネちゃんを助けてくれてありがとうございました!」。
「いえ、別に大したことじゃありませんよ」。
あの後、僕達は街へと戻り、今はギルドの二階にある酒場に来ていた。
「そう言えば、アリーネさんはお体はもう大丈夫なんですか?」。
「アリーネでかまわない、あと、体はすっかり元気だ」。
「にしてもお兄さん、けっこう凄い人だったんですね!」。
「あっ、僕の名前はジンね、そう言えば、なんであんなことになったんですか?」。
「はい、実はちょっとヤバいやつと遭遇しちゃって」。
「落ち着いて聞いてほしい。―――この辺りに魔人族がいる」。
「はい?」。
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「チッ、まさかあの女、竜化を使えたとはな・・・まぁ、あのチビを攻撃しただけで暴走してくれたのは助かったな」。
街の路地裏、黒いフードを被った男が呟く。右足が痛むのか、右足を引きずるようにして歩いている。
「ヤレヤレ、随分とやられた様だな」。
フードの男が声のした方を見ると、そこには黒いローブをまとったもう一人の男がいた。
「回復薬だ。使え」。
「・・・・・チッ」。
フードの男は不満そうだが、やはり足が痛むのか、それを受け取り、口へと流し込んだ。
「さて、アレはちゃんと設置したんだろうな?」。
「オウ、バッチリだ」。
「そうか、ならば始めるとするか」。
ローブの男はそう言うと、フードの男と共に路地裏の奥へと進んで行った。
どうも、トカイナカです。今回で3回目の投稿です。最近はやたらと鼻血が出ます。何かいい方法を知っている人がいれば教えて下さい。来週あたりに4話も投稿する予定なので、もしよろしければブックマークの方もよろしくお願いします。