第一章その4
「こんのぉ!」
レラは爆炎を、持っていた斧で薙ぎ払った。 咄嗟に斬撃で爆炎を防いだのだ! ワザマエ!
「さぁ、どうする? 貴様はよくても、その他の兵士はこの炎を防げまい。 殺されたくなければ、投降しろ」
「レ、レラ……い、行っちゃあ、ダメ、だよ……。 あの人、嘘を、吐いて、るから」
褐色肌の少女がつぶやく。 だが、レラは何も答えない。 この状況をどうにかする手を、何も思いつかないのだ。
「あ、アンタら……走って逃げな。 アタシが此処を食い止める。 だから……!」
「姉御! それは!」「無茶ですよ!」「アンタを見捨てて逃げるわけには!」
周囲の兵士たちは引き留めようとするが、レラは首を横に振った。
「これよりマシな方法が思いつかないんだよ。 ごめんね。 アタシが、もっと強ければ……」
「……レラ!」
レラは、悔しそうに歯ぎしりをしながら、一歩前へ出た。
「アタシの命、持っていきな」
「……そうか。 では───殺せ」
ジードが命令すると、兵士たちは一斉に走り出した。 レラの方へではなく、レジスタンスの兵士のもとへ、だが。
「な!? アンタって人はァ!」
レラは咄嗟に斧を握り、兵士を食い止めようとする。 だが、多勢に無勢だ。 兵士たちはレラを迂回していく! その先にいるのは、少年兵だ!
「う、うわぁああ!」
少年兵の悲鳴! ナムサン! 少年は闇雲に刀を振り回すが、その腹を槍に貫かれて倒れた! おそらく致命傷だ!
「や、やだ……、やだ! こないで!! ───|Lapis de pariete!」
褐色肌の少女は、地面に手を着く。 次の瞬間、地面が隆起して兵士の一人を弾き飛ばした! だが、兵士は次々に突っ込んでくる。 その槍の切っ先が少女に向けられ───
そのまま槍は地面に落ちた。
「ゴポッ」
見れば、兵士の胸からは腕が生えていた。 兵士が振り向くと───見よ! 雷牙の姿がそこに!
「き、貴様! 何者だ!」
兵士たちは突然のことに動きを止め、雷牙を包囲しようとする。
「あ、あなた、は……?」
褐色の少女は、呆然とした表情で雷牙を見つめた。
「……。 親父の教えでよぉ。 カタギの人間と、ガキには優しくってのがあるんだよな」
「貴様、なにを言っている?」「う、動くな!」「動けば殺す!」
「数ばっかりそろえて、女に手を出すたあ、教えの正反対じゃねぇか。 ……テメェら、よほど、死にてぇらしいな?」
雷牙は兵士たちを睨みつける。 その眼光だけで、兵士は怯んだ。 それはそうだろう。 まるで、奈落の底のような目だったのだから。 無感情な殺気が、雷牙を包み込む。
”””どうでもいいけど。 ただ、誰かを殺してぇな。”””
兵士の姿と、いつかの売人の姿が重なって見える。 雷牙の目の前で、命を攫って行く存在。 それを前にして、雷牙の中には、憎悪と殺意が渦巻いていた。
雷牙「一回1000文字ちょいずつ小分けなんだよな。 できるだけ毎日投降するから、気に入ったら応援してくれよな!」
レラ「それじゃあ、また次回! アタシも戦ってるよ!」