第一章その6
GYAANN!! 雷牙の爪とジードの槍が交錯し、甲高い音を立てる。
「貴様! 邪魔立てするかぁ!」
ジードは槍を突き出し雷牙を攻め立てる。
”””隊長格なだけあって、基本的な槍術はつかえるんだな。 まぁ、どうせ殺すから、どうでもいいや”””
雷牙は冷静に攻撃を捌きながら、反撃の糸口を探す。 素早い突きを、重心移動で左に回避。 続く回転斬りを、爪で弾く。
「セイ! セイ! 死ねぇ! 反逆者めが! ───Hyacinthum flamma!」
ギャン、ガキンッ、ギィン! 衝突の度に金属音が響く。 ジードは槍に魔力を込め、蒼炎を放つ。 だが、勝負を焦りすぎだ!
「フッ!」雷牙はこれをブリッジ回避! 即座に拳を握り、距離を詰める!
ボゴン! 強烈なストレートパンチが、ジードの鎧を粉砕!
「金属鎧を、素手で!? なんて熟練度だい。 まるで聖騎士だよ」
あまりにも高速で行われる攻防に、レラを除いた一般兵は、ただ見ているだけだった。 そのレラでも、辛うじて雷牙の拳を目で追える程度だ。
「ゴポッ……、貴様、強い、な……」
「まぁな。 致命傷じゃないのはわかってる。 倒れたフリは無意味だぜ」
「ク、見破られているか。 だが、貴様、魔法は使えないようだな。 手の内が分からず、攻めきれなかったが、そうとわかれば恐れるほどのものでも───!?」
「グヲヲヲヲヲヲヲッ!!!!」
その時、シヴの山々───ではないが、山の中に、地響きが起きるほどの咆哮が轟いた。 バサッ、バサッ、バサッ。 森の木々を揺らすほどの強風を巻き起こしながら、巨大な影が舞い降りてこようとしていた。
「あ、あれは……まさか、炎竜、ファイアドラン!?」
「この山の主が、どうしてこんな時に!」
その圧倒的な存在感を前に、誰もが戦いをやめ、影に目を向けていた。
”””なんだ、アレ。 竜? あんな図体で、飛んでる、のか?”””
雷牙は初めて見る、存在。異世界の生態系の頂点たる生物。 万物の王。 竜! その姿は、目前にすると、呼吸すら忘れそうだった。
ひと言で形容するなら、ワイバーン。 目視で確認する限り、全長は15メートル。 全身が真紅の鱗に覆われ、呼吸のたびに、口元から火の粉が舞い散る。 体重はキロではなく、トンで表記されるであろう巨体の竜は、その重さを感じさせないほどの身軽さで、森に着地しようとしていた。
「クソッ! 逃げるぞ! ディザスターレベル8の怪物が暴れたら、命はない! 作戦は中断する! 繰り返す。 作戦は中断だ!」
ジードは、兵士たちに撤退を促す。 だが、その動きが竜の注意を引いた。
「GRRRR……」
山の主の首が、ゆっくりとジードに向けられる。 その顎が開くと、ずらりと並ぶ牙が見えた。
「ヒ、ヒィ! く、来るな! く───
───バクン
次の瞬間、ジードの上半身は、消えていた。 否。 山の主の口の中にあった。 金属の鎧が、まるで貝殻のように吐き出される。 その鎧には、びっちりと鮮血が付いていた。 残された下半身は、ぼたぼたと血液を零していた。 だが、山の主が、二口目を所望したことで、なくなった。
雷牙「次はボス戦だぜ!」
愛羅「がんばれ~」
雷牙「よし、頑張る」
愛羅「ダーリンってば単純……。 ま、まあ、次回もお楽しみに!」




