序:4~出会い~
至らぬところが多々ありますが、よろしくお願いします。
誤字脱字ミス知識などありましたら、申し訳ございません。
珍しくリュコフより早く目が覚めた。
俺は日の出より前に家を出て軽く外を散策する。
普段と見慣れない世界が広がってるように思える。
少し肌寒いのでコートを羽織ると丘を下る。
街にはまだチラホラ灯りが見える。
キンと張りつめた空気が好きだ。
少し歩いたところに鉱山があってその向こうには火山もある。
噴火しても街まで溶岩が流れてくる心配はない。
火山があるせいで30分も歩かないうちにあちこちの温泉にたどり着く。
勝手に入ってはならない所ばかりだが秘湯というものもあり道を外れたところにある。
雑木林を抜けると秘湯が見えてくる。
軽く伸びをすると服を脱ぐ。俺の目的はここだ。
岩肌の上に服を置きゆっくり浸かる…。
つま先から温まるあの感覚。
身体の芯から回復していくような気もする。
リュコフにも教えてないこの場所は俺だけの秘密だ。
俺は不覚にも眠ってしまった。
どれくらい経ったか。
湯気の中。岩肌の影に隠れるようにいた俺は侵入者の存在に気が付くのが遅れた。
湯気に影が映る。誰だろう。俺以外にここに来たのか。
曖昧な意識の中で我を取り戻そうとすると水面に波紋が立ってしまった。
なぜだろう。少し動揺してしまった。
誰にバレたっていいようにも思うのだが、隠れて入浴することに対しての罪悪感からか。
湯気の中から見えた人影は白髪の少女だった。
年は同じくらいか…。
白い肌に黄色い瞳がよく目立つ。
こちらを見るその瞳が少し怖い。
声が出ない。女の子の裸を目の当たりに身体が固まる。
少女はゆっくり湯に浸かった。
「え?浸かるの?」…「逃げないんだ…」
彼女には彼女の世界があるのか俺の存在には気づいているが何食わぬ顔で湯に浸かっている。
膠着した自分は差し置いて。
なんとも言えない空気の中、俺は上がるに上がれないまま沈黙が過ぎる。
少し膨らんだ胸を見る。
そのうち自分に対する嫌悪感で目を背ける。
小さい身体があっという間に湯に沈む。
見かけない顔だけどすごく奇麗だ。
自分の服を取りに行きたい。
残念なことに彼女の置いた服のすぐ近くだった。
温泉の真ん中の岩を裏から回って彼女の死角から上がって服を取ろう。
湯気に身を潜めて俺はゆっくり回り込んだ。
彼女に近づいたところだった。
「なに?」
まずかったかな…この距離で死角にいたら、なんだかいかがわしいことを考えてとった行動に思える。
客観的に見たらひどく懐疑的な状況だ。
「あ…いや…服を…」
それと同時に彼女の服の方から音が聞こえる。まるで俺の声をかき消すように。
ビーッ!!ビーッ!!
彼女が音を止める。
「そ、それは?」
「軍の無線。連絡用兼腕時計」
「あ…そう…」
「軍!?」
思わず強めの声が出た。
この子は俺と同い年に見えたのに…もしかして俺なんかよりよっぽど年上…!?
「そう軍…無線…うるさいから…」
「へぇ…」
ビーッ!!
また鳴る。そして彼女は止める。
「出なくていいの?」
「いいの…今は自分の時間だから…」
「…」
変わった娘だ。
なんだか彼女の話を聞きたくなって、俺はもう一度湯船に浸かるのだった。
緊急連絡とかじゃないのだろうか。
「君はアデルの軍に所属してるの?君のような若い子がどうして…」
「私は特別…そういう役目だから…」
「役目って…」
ビーッ!!
「うるさいなぁ…」
そう言いながら無線に出る少女の背中から臀部にかけてが一瞬目に入ってしまう。思わず目を背けた。
「ミュージィ…なぜ無線に出ない?」
「すいません気が付きませんでした」
「すぐに戻れ。緊急だ」
「了解」
「何かあったの?」
服を着替えながら少女に質問した。
「あなたには関係ないわ」
「そうだな…」
不愛想な少女は着替え終わるとすぐに駆け出した。
「ちょっと!そっちは遠回りだ!」
「…」
「軍港に行くだけならこっちのほうが早い。ただ最後にフェンス登る前提だけど…」
「いいわ。案内して」
「あなた名前は?」
走りながら少女は問いかけてくる。
「ディベロ・クロスハートだ。クロスハートが長いからみんなからは『ペケ』って呼ばれてる」
「ペケ…可愛い名前ね」
「ちょっと恥ずかしいんだけどね。君は?」
「ミュージィ・アップル。よろしく」
雑木林を抜けると軍港が見えてくる。
「あれなんだ?」
軍港に見慣れぬ影があった。
その影を目撃したと同時だった。
俺たちは爆音と衝撃に包まれた。
爆炎が舞い上がる。
影は一つ二つではない。
巨人だ。
「なにあのPJ…!!?」
「こちらミュージィ!応答願います!」
「こちら本部!現在所属不明の部隊の攻撃を受けている模様!」
「所属…不明…!」
「全長7メートルぐらいか?普通の規格より少し小さく見える…。それに…」
「目が多い…」
爆炎と火の粉の中に佇むPJの目は8つ。
まるで蜘蛛の目のようなそれは黒煙の合間から怪しい光を放つ。
ミュージィは急いで軍港に走る。
「危ない!!」
軍港に向かう道なき道に流れ弾が着弾する。
超弩級の衝撃が走る。
「ミュージィ!!」
吹き飛ばされたミュージィが悲鳴も上げず立ち上がると再び走りだした。
着弾して結果道が崩れフェンスが倒れたことで通りやすくなった。
同じ頃ようやく味方のPJが現れ始めた。
「ペケ!こっちへ!そこにいては危ない!!」
ミュージィに言われるまま俺も軍港に走る。
「あの所属不明機…四足走行形態がないのか!?」
「何もかも規格外ね」
「ミュージィ伍長!こちらへ!」
「遅くなりました!彼を保護してあげてください」
「君は?」
「え!?一般人です…!」
軍港の中の格納庫に連れ込まれると整備士と思われる人たちが格納庫の奥の巨大な影の上に立ち被せられてシートを剥がしていく。
これは…!?
「整備は整っています。いつでもいけます」
「ありがとう」
白いPJ…少し大きいように思える。
ミュージィが手袋をはめる。
この娘が搭乗するのか…!?俺とそう変わらない年齢なのに…
その時であった。
「伏せろ!!」
一人の整備士の声に身をかがめた。
格納庫に着弾したのだ。
瓦礫が舞い砂煙で覆われる。
パラパラと破片が落ちる。
頭を抱える俺はゆっくり顔を上げた。
さっきまでいた整備士たちがいない…。
よく見ると瓦礫の下から手が見える。
靴が転がっている。
血が滴っている。
呆然としてる中、人影が見えた。
ミュージィだ。
彼女はゆっくり立ち上がった。右腕で左腕を押さえながら。
左腕から滴る血がポタポタと跡を示す。
ケガを負いながらも戦う意思を持ち寄って歩みを止めない彼女に恐怖と敬意の入り混じった違和感だけが残った。
幸い俺に痛みはない。
彼女の側にいくと肩を貸した。
さっきの衝撃で斜めになった白いPJはコックピットをこちらに向けている。
俺たちが辿り着くのを待っているようにして。
今にも動き出しそうだった。
操縦席は二つあった。
「このPJはテスト機よ。そのため二人乗りになってる」
苦痛に歪む彼女の顔には汗と砂がこびりつく。
「最新モデルのシステムが搭載されてる。試験段階だけど」
淡々と続ける彼女の言葉に寄り添う。
「手前の席がメイン。私はそのためのテストパイロット。後ろは研究員がデータを取りながら搭乗する」
「ペケ…あなたも乗りなさい。ここにいたら危ないから」




