表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

プロローグ

プロローグ



 妹が婚姻したのは、4年前のことである。妹が王立高等学園1年生で俺が2年生の時の夏のことだ。


 婚姻から1年後には双子の男女が生まれ、今現在、歳は3歳になっている。俺からすれば甥と姪にあたるわけだが、お目にかかれたのはたったの2回だけである。その理由は、簡単な話で妹は婚姻後は王宮に住むようになったからだ。


 何を言おう……相手は、現国王である。


 先の国王は現国王が生まれて直ぐに他界し、即ち現国王は生まれて直ぐに即位したという。ただ実際の政務は、その即位当時から現在に至るまで王太后と現宰相が行っており、現国王は比較的自由な生活をしてきたとのことだ。そして、王立高等学園に入学後に妹と出会い互いに恋におちて(年齢的に直ぐ冷めないか心配だが)、婚姻するに至ったのだという。


 しかも妹は平民ながら、正室として王家に迎えられたわけだが、このあたりは王太后や現宰相が支援したらしい。推測では王太后自身も歴史はある名家の娘であるものの有する爵位は準男爵位で先の国王と婚姻する前は、ほぼ平民に近い生活をしてきたことから、今回の婚姻を支持したのだと言われている。


 尚、現宰相が支持した理由は定かではない。


 まあ、兎にも角にも妹は王妃である以上は、王族になってしまったわけだ。俺にとってはとんでもなく迷惑な話なのだがな。


 というのも、俺はリベラール合州国という国に憧れており、いずれ渡ってみたいと考えていた。この大ハイデルン王国とは違い、貴族など存在せず身分制度も存在しないのだという。であるから、貴族か否か又はどの家の出身かで差別されることなど一切ない……と、いくつもの本に書かれている。


 こんな素晴らしい国はリベラール合州国を除いてどこにあるのだろうか? 


 伝統が無いなどと騒いで批判している者も多いのだが、伝統というだけで考えが凝り固まっている奴らこそが、どうかしている。


 と、いうわけで、俺はとにかくリベラール合州国へ渡りたかった。ところが、妹が大ハイデルン王国の国王と婚姻したことで、俺も迂闊に身動きが取れなくなってしまったのだ。俺や両親は王族ではないものの、それに近い存在ということで護衛が付くようになり、しかも王宮からの指示で自由な行動も制限された。


 さらに俺の父親は、男爵位を王より与えられ、それで天狗になったのか知らないが、勝手に俺の縁談まで持ちかけてきたのだ。その相手はどうやら貴族の娘であるそうだ。俺は実質平民である以上、仮に婚姻でもしたら終わりだ。


 毎日死ぬまで周囲の貴族の連中に馬鹿にされ続けストレスを溜め、人生を棒に振るは明白である。


 で、あるから俺は、


「俺は人間である以上、個人として尊重されるべきだ。自由が保障されるべきだ! 自由万歳! 」


 そう叫んで、縁談の前日に家を飛び出した。ちょうど王立高等学園の卒業式も終わった時期であり、就職は家業を継ぐということにしていたので、俺は乗船券を手に入れて遥か遠くの国へと旅立ったのである。


 こうして俺は自由を手に入れることに成功した。

 

 ああ、素晴らしい! 生まれながらにして天より授かった自由が、こうして再び俺に戻って来るのだ! 


 














 と、興奮していたのが懐かしい。

 

 今からちょうど3年前に大ハイデルン王国を飛び出して、ここリベラール合州国にやって来た頃は、「素晴らしい」と何度、心の中で思っていたことか。


 現在は新聞配達の仕事で、日銭を稼いでいる毎日である。


 俺、これからどうなるんだろう……。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ