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勇者ご一行は全部俺!  作者: 塚禎 壱
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5 大移動の決心

更新があいてしまい、申し訳ありません。

一定のペースで続けるというのは難しいですね。

本格的にヒューマ体(ヤタノ)の家の食糧事情が危険だと思い始めてきた。

一家の姓はグリーン、仕事は農業。

ただし、土地が少なく、働き手がいない。

父親は1年前から戦争に駆り出されてしまい、母親一人と祖母が子供の面倒を見ている。

子供は10歳の長男、8歳の次男、6歳の長女に、3歳のおれだ。

名前は父親がハタタ、祖母がラノ、母親がユノ、長男がハル、次男がマタタ、長女がユラだ。おばあちゃんとお母さんが畑仕事と針仕事と家事とヤタノ(おれ)の世話をし、ハルノ、マタタ、ユラがお手伝いをする。もちろん子供は大した戦力にはならないので畑仕事は種まきはしているもののあまり手入れできていない。お隣さんのブラウン夫婦にたまに手伝ってもらっているから、完全に放置しているわけではないようだ。だが、お隣さんぐらいしか、頼る相手がおらず、野菜は仲介商人に売っているせいで利益がほとんどない。

小さな村だから、泥棒とかは少ないかもしれないが、獣に野菜を食われることも多い。

もし、リザードマンのようなモンスターが現れたら全滅だろう。

リザードマンがモンスターなのか、亜人かなにかはいまだに分からないが。


ちなみにお隣さんの旦那さんは名前をムタといい、は学校の先生をしている。村に必要な人ということで戦争に行かずに済んだらしい。


(とにかく、野菜しかない。肉が無い)


米や芋も多くはない。

いつ栄養失調になってもおかしくない状態だ。


「ぼーっとしてっとまたご飯取られるよ」


長男のハルが注意してくれるが、次男のマタタと長女のユラは隙あらばおれのご飯を横取りしようとする。

ハルの言葉にうなずいて、もぐもぐと味気ない野菜一色のメニューを食べる。

最初はもの凄く抵抗があったが、芋虫のようなゲテモノだって食べられるようになってしまった。芋虫は今や争奪戦が起きるぐらい貴重なタンパク源なのだ。


モンスター体(クリス)ヒューマ体(ヤタノ)のところまで移動させる。そして、猪とか狩ってヒューマ体(ヤタノ)の食事改善を図ろう)


方針を決める。モンスター体(クリス)はある程度強くなった。

まだ不安はあるが、ヒューマ体(ヤタノ)のところに移動するだけならできる気がする。

モンスター体の今の住処すみかが安全とは言いがたく、ヒューマ体の周辺はなんとなく安全そうに見える。ただ、二つの体がかなりの距離が離れていることだけは感覚で分かる。陸続きの保証もないが、見切り発車で目指さないと餓死(がし)しそうになってからではまったく間に合わない、そんな距離なのだ。


(本当はもう一段階進化したい。今のままではリザードマンもワイバーンも突破できない)


だが、命懸けの戦いをして強化するのと、命懸けの大移動ではどっちも掛けだ。

であれば、まだ見ぬ地に挑戦するほうが、新しい情報が得られる分だけ利があると思う。


(狩り易く、食べられるようなモンスターが多く見つかればありがたいが、数が少なくても安全に移動できる道があれば一番いい。今は森の北側、山側に来ている。洞窟か谷底か、ワイバーンに狙われない道を探そう)


モンスター体(クリス)に出発の準備をさせながら、ヴァイパー体(バレッタ)の方に思考を移動する。

相変わらず良い家に住んでいる。しつけは厳しいが、食事は美味しい。

ついで、エルフ体(ルオーナ)のほうに思考を移動する。


何か、瞑想のようなことを指示されている。すなわち、あぐらをかき、目を閉じ、体内の力を循環させるようにとのことだ。体内の力というのが何か不明だが、魔力強化のテクニックかもしれない。もしくは、情緒不安定だからと、単に精神統一が目的かもしれない。


(魔力強化だと思って取り組もう。その方が、やる気もでるし)


せっかくなら、暇なときにヒューマ体(ヤタノ)ヴァイパー体(バレッタ)の二人にも同時に取り組むことにしよう。


ヒューマ体(ヤタノ)ヴァイパー体(バレッタ)エルフ体(ルオーナ)が精神統一したり、筋トレしたり、眠ったりしている間、モンスター体(クリス)を操作して山地を動く。ワイバーンやトロールたちは、日が沈むとほとんど活動しない。もともと他の体を操作する都合でも、モンスター体(クリス)の移動は基本夜だが、昼間に隠れられる岩陰を探しながら移動しているので全然思い通りの方向に進めない。でも、その手間のおかげで、比較的安全に移動できている。

狙い通り谷底のような地形を進んでいくと、途中に洞窟があった。


(谷底をこのまま進んでもいいが、洞窟が寝床として使えるか確認しておきたいな)


迷ったが、洞窟に入ってみる。

ぴちょん、ぴちょんと水が滴っていて中は涼しい。


(居心地は悪くないが、ちょっと怖いな)


夜目は利くが、洞窟の中は月や星の明るさも届かない完全な闇だ。

別にお化けを心配しているわけではないが、暗闇でどこに相手がいるか分からないのは落ち着かないのだ。幸い、今は視覚以外の感覚に優れるモンスターなので、真っ暗でもある程度動くものは察知できる。便利だ。


それによると洞窟の中には数匹モンスターがいるみたいだ。

動くモンスターで距離を測ると案外、奥が深い。


(小さそうだし、とりあえず戦ってみるか)


そう思って奥へと踏み出したが、横からコトリと物音がした。

ひゅんっと剣が振り下ろされて、左のヘビ頭に傷を作った。


「シャー(なんだ!?)」


人間、いやヒューマの骨だ。骸骨がいこつが居た。


(スケルトンか!?)


焦って左右のヘビ頭で思い切り噛み付いたら、あっけなくバラバラになった。

魔石も小さすぎてどこに行ったか分からなくなった。

心臓がバクバクする。この手のモンスターの不意打ちは心臓に悪い。


問題はこいつの気配を事前に感知することができなかったことだ。


(そういえばヘビの感知センサーは温度で感知するんだったな)


スケルトンのようなアンデット系モンスターには働かないようだ。

あと、蜘蛛くも蝙蝠こうもり、スライムのモンスターが居たが、こちらは感知できるため久々に良い量の食事となった。


(弱いモンスターばっかりで助かったな)


洞窟はかなり深いが、奥は行き止まりのようだった。

スケルトンのような感知できないモンスターは危険だが、全部倒しきったようだし、ねぐらとしては悪くない感じだ。


おれは腹を満たすとともにモンスター体(クリス)を休息させることにした。


明け方ヒューマ体(ヤタノ)に視点を移し、食べ物を探す。

昨日は長男のハルと次男のハタタに連れられて木苺を食べさせてもらった。


今日はハルとハタタの2人は村のお年寄り達と共に山菜取りに行っている。もちろん、山の動物|(モンスターではない奴)も獲れれば分け前はもらえるらしい。今晩は少し豪華な夕食が期待できそうだ。


だが、夕食まで腹が減って仕方が無い。

一人では遠出は厳しいので、お隣さんに遊びに行く体でお菓子をねだることにした。あまりしつこいと嫌われてしまうが、お隣さんにはネネアちゃんという2歳年上の女の子が居る。

遊びにきたといえば、無碍むげにはされにくい。


「ネーネーアーちゃーん、あーそーぼー」


とお隣さんの玄関で声を掛けると、奥さんのミネアおばさんが出てきた。


「あら、ヤタノちゃん、よく来たわねー。でも、ネネアは今、ユラお姉ちゃんと一緒にお人形ごっこしているのよねー」


おばさんが一緒に遊べるかどうか悩んでいるようだ。


「ぼくもお人形遊び好きだよ。一緒に遊びたいな」


口からでまかせだが、問題ない。ユラお姉ちゃんもお転婆でお人形遊びより男の子と一緒にかけっこするタイプだ。同じようにお菓子をもらうのが目当てに違いなく、すぐにお人形遊びに飽きてしまうことだろう。ネネアちゃんがつまらなくなったりしないように盛り上げてやるのでおれも混ぜろ。


「ヤタノちゃんは男の子だけど、おとなしいから大丈夫かしらね」


おばさんは一人うなずくとユノとネネアちゃんのところに案内してくれた。


家の縁側、日当たりのよい所で2人お人形遊びをしていた。

ネネアちゃんが一生懸命自分の考えた設定をユノに話しているところだが、早くユノの視線は台所のオヤツの方をチラチラと気にしている。もう少し真面目に聞いてやれよ。


「む、ヤタノも来たの?」


おれを見つけてユノは不機嫌そうな顔になった。自分の分が減ると思っているに違いない。


「僕もお人形さんで遊ぶの」


ネネアちゃんの視線に合わせてしゃがむ。

初めて会ったとき、男の子はお人形壊すから嫌いと言っていたので、距離に気をつける。

まだ、お人形には手を出さない。


「男の子なのに?」


ネネアちゃんの疑惑のこもったまなざしに耐えながら、そうだよ、と答える。


「さっきエリザベスちゃんの好きな食べ物を話していたと思うけど、続きを聞かせて」


ネネアちゃんはさっきまで自分が熱心に話していたことを忘れているらしく、きょとんとしていたが、すぐに続きを話し始めた。


「・・・でね、こっちの子とは凄い仲が良いからね、同じリボンをつけてあげたいんだけど、このリボンがひとつしかなくてね・・・」


気分良くしゃべっているときには邪魔をしてはいけない。

そんなことを思いながら一緒に遊んで、もちろんお菓子も一緒に食べた。

この日のお菓子はクッキーだった。砂糖が貴重なので甘さはひかえめだが実に美味しかった。

最終的にユノが飽きて鬼ごっこにネネア連れ出し、ネネアとおれが力尽きるまで遊んだ。



今回もお付き合いいただき、ありがとうございます。

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