4 転生半年から3年の間
投稿ペースがバラバラですみません。
当面は週1、2回になりそうです。
クマウサギが闊歩する拠点からさらに東に移動することにした。
今後はもっと東に拠点を作り直すことにした。南は湿地が近いから避ける。北は飛行モンスターが怖いので、あまり気が進まなかった。
(やはり立ちふさがるか・・・)
今、おれの前にはクマウサギがいる。
素早く、ヴァイパー体、エルフ体、ヒューマ体を布団に移動させ、寝たフリをさせる。
『あれ~、寝ちゃうの~?』
ヒューマ体の兄と姉が話しかけてくるが、無視だ。
(!?っとあぶねぇ)
クマウサギがジャンプアタックをしてくるのをバックステップでかわす。
(食らえ!毒ブレス!)
ヒュドラに進化して新たに得た能力、毒ブレスだ。
羽虫や小動物には一撃必殺だが、普通のモンスターはまぁ死なない。
せいぜい、軽く動きを遅くし、体力をジワジワ削る程度。
だが、持久戦に持ち込めば驚くほど高い効果を上げる。
(おれは回避に専念。牽制に噛み付くフリだけでいい)
自棄になって突っ込んでくるなら噛み付きからの麻痺毒で勝負する。
ヒュドラに進化してから体が頑丈になったのと、頭が三つになって麻痺毒が回るのが早くなったため、殺される可能性は低い。
結局、クマウサギも3回毒ブレスを受けたところで突っ込んできて、麻痺毒の餌食にしてやった。
(ふぅ。少しケガをしたが、クマウサギには勝てるな)
あちこち爪跡がついた体を確認する。
今後は、リザードマンたちと重ならない範囲でクマウサギを狩るようにしよう。
~転生から1年後~
エルフ体の誕生日パーティーがあった。
おかげで、今日で1年たったということが分かった。
また、ヴァイパー体は何かお父様からお祝いの言葉と訓示があったが、ほとんど聞き取れなかった。エルフ体の一件が無ければ誕生日の儀式とは分からなかっただろう。
なお、ヒューマ体の方は何もイベントが展開されなかった。まるっきり普通の日だった。
子供が多かったり、生活が苦しかったりすると誕生日どころじゃないってことだね!
後、一つ問題が見つかった。
ヒューマ体の家族がおれを2足歩行させようとするのだけれど、立てないのだ。
(あれ?もしかして筋力不足なんじゃないか?)
そういえば、ハイハイをたくさんすると筋力がついて、運動が得意な子になるという話を聞いたことがあった気がする。
(やべっ。モンスター体に気を取られすぎていて、運動できていねぇ!)
その日から、おれは赤子3体を順番にあちこちハイハイさせてトレーニングに励むことにした。
言葉はまだ分からないが、自分の名前だけは分かるようになってきた。
ヒューマ体が男で名前はヤタノ。エルフ体が女で名前はルオーナ。ヴァイパー体が女で名前はバレッタ。
モンスター体だけ、名前が無い。
(モンスターのオス、メスは良く分からない。どっちでも通用する名前にするか)
たしか、クリスという名前はどっちでも使えたと思う。男だとクリストファーを略して、女だとクリスティーナを略してクリスと呼ぶから、だ。
ヒューマ体が男で名前はヤタノ。
エルフ体が女で名前はルオーナ。
ヴァイパー体が女で名前はバレッタ。
モンスター体が性別なしで名前はクリス。
将来集まったら、怪しげで目立ちそうだな。
特に、モンスター体は今後の進化次第では基本的に別行動を余儀なくされる。
(モンスターを使役する職業とかないだろうか?)
面倒なく同行できる職業がなにか時間を見つけて調査することを心に決める。
モンスター体は相変わらず3つ首のヒュドラだ。
体は半年で1.5倍くらいに成長していた。
おそらく後少しでもう一回進化できそうなところに来ていると感じる。
湿地の方は相変わらず強力なリザードマンが優勢なまま、戦力回復に努めているように見える。ただし、森の中での狩りは続いているのでやはり湿地側には狩りに出づらい。
しかし、森側も木や花の怪物が闊歩している。
リザードマンたちの狩りをときどき見物しているが、木の怪物はたまにリザードマンが倒すが、花の怪物にはリザードマンも歯が立たないらしい。
食虫植物の巨大化したような姿でクマウサギなどの中堅モンスターを、にょっきと生えた蔓で捕らえて頭から花の中心に放り込むのだ。
暴れるモンスターがあっという間に静かになるから捕まったら最期だと思う。
非常におそろしい存在だが、肉のくさりかけのような臭いがするので、注意すれば事前に察知するのは容易である。
木のモンスターはよくある幹に顔があるようなモンスターだが、こいつが案外強い。
一度戦ってみたが、噛み付きによる麻痺毒は効果が無かった。毒ブレスは分かりにくいが効果があるらしい。逆に木のモンスターの攻撃としては、枝での攻撃は避けやすいが、根の攻撃は避けにくい。しかも、硬いはずの皮を一撃で貫いてくる。ただ、足が遅いので逃げ切るのは難しくなかった。
結局2回ほど失敗して逃げ出したが、3回目で倒すことができた。
どうしてかは分からないが、魔石の位置はなんとなく分かる。この木のモンスターの場合、枝の股にある瘤の中に魔石があった。
(久々に強力なモンスターの魔石ゲット!)
ここのところ、リザードマン、花の怪物など上位のモンスターと自分とでクマウサギとウサギのモンスターは狩り尽してしまったらしく、まったく魔石が手に入らなかった。魔石の無い生き物を食べていたので飢えることは無かったが、強くなれないのでちょっと困っていたのだ。
(この感覚は進化できそうだ…)
進化が始まり意識が途絶えると、他の体の筋トレをしながら待った。
前に比べると半分くらいの時間で進化が終わった。
確認すると、人間の女の上半身のようなものが生えていた。
(ヘビ女、ナーガ、いやラミアのほうがしっくりくるかな)
いままでの体が一回り大きくなり、3つ首の真ん中の首が上半身だけの人間の女みたいな姿に変化していた。ただし、髪の毛はただの模様で、声もほとんど出ない。
左右の首はいままでと特に変化していない。
手は一応動くがひどく不器用だった。視界がヒューマと同じカラーになったことくらいしかモンスター的にはメリットがない。謎の仕様だ。
(対ヒューマ用には疑似餌なのだろうか?首が一つ減った分、進化前より弱体化している気しかしないが、将来ヒューマに近い姿になれるなら、願ったり叶ったりだ)
疑似餌として使うにはヘビの部分が隠せる水辺が必須なので、今はリザードマンたちがうようよしている湿地あたりが本来の棲息地のような気がするが、あそこは無理だと思う。
(東の森の中で、池とかないか探してみるか)
この姿は目立つ。リザードマンにも発見されやすくなってしまったから、今後は西側の湿地には近づかないようにしよう。
~転生から3年後~
ここ数年、最近、何もかもうまくいかない。
東の森の中に池はいくつかあったが、他のモンスターも水飲み場としてつかっているようで、なかなか落ち着いて過ごせなかった。
何度か花の怪物に襲われたが、ぎりぎり逃げ延びた。
あいつの蔓に麻痺と毒の効果があるらしく、あやうく殺されかけた。
結局、北へ北へと逃れて、飛行モンスターが飛んでいる地域まできていた。
この辺りは木が少なく、背の低い植物が多い荒地で、主なモンスターは飛行しているモンスター(ワイバーンとかいう奴らしい)とヘルハウンドという犬のモンスター、そしてトロールとかいう巨人のようなモンスターが闊歩していた。ヘルハウンドという犬のモンスターが最弱でワイバーンが最強だ。この地域では木や岩陰に隠れなければワイバーンのエサになってしまう。ただし、ワイバーンはトロールにはあまり襲いかからない。
トロールが強く大きいモンスターであり、力比べになったらワイバーンとて無事ではないからだろう。肉食モンスターが多いせいで、草食獣は小型の目立たないものしか存在しない。
ちなみにモンスターの名前が分かったのはヴァイパー体の家にモンスターの図柄があり、名前が記載されていたからだ。
尚、花のモンスターや木のモンスターの図柄は無かった。
たぶん、エルフ体の方で探せば分かるような気がする。
話がそれたが、この地域ではとにかくワイバーンに気をつけなければならない。
おれは森の端で、小型の草食獣を食糧に生活するようになった。
ヘルハウンドは狩れなくはないが、集団になっていることが多く、手が出しづらいのだ。
(今は我慢だ…)
モンスター体がひもじい思いをしているのと同様、ヒューマ体もひもじい思いをしていた。
なんというか、段々貧乏になっている気がする。
食事に肉が出ないせいでタンパク質が不足している。
どうも隣国と戦争をしているらしく、大人が少なくて狩りができないらしい。
(将来、冒険者になろうと思っているのに、体が小さくてはいかんな)
食糧事情の改善が急務だ。
エルフ体は家族に心配そうな顔で見られている。
なんと、いまだに文字が読めないのだ。聞くのと話すのも少ししか分からない。
どうも、言語が口語と標準語と古語ともうひとつ謎の言語の4つで構成されているみたいだ。口語と標準語はまだ近いところがあるが古語と謎言語は今の言語と隔たりが大きくてもはや別の国の言葉のようだった。とりあえず標準語で使用する44文字から覚えないといけない。
ヴァイパー体にいたってはいつも怒られている。
ヴァイパー体の家はヒュプノ家という貴族の家柄らしく、しつけに厳しい。転生前の世界では最近見ない感じのムチ教育だ。これが、加減されていても痛い。だから頑張って最初に言葉を覚えた体ではあるが、どうしても4つの体を操作するせいで、注意力散漫だとか、教えられたことをすぐ忘れるとか、家庭教師からマイナス評価を食らい続けている。
「こういうマイナス評価は地味にこたえる」
一人部屋に戻ると少し泣いてしまった。
こういうのって子供のうちは分かっていても我慢できないものらしい。通算すれば35歳を超える年齢なのに、しくしく一人泣きをしてしまうのがちょっと恥ずかしい。
さて、しつけは厳しいが逃げ出すということはまだ考えていない。何しろ、この世界の情報を3種族から入手するにはここできっちり教育を受けることが肝要だからだ。
絶対、4種族の人生を堪能しきってやるぜ。
今回もお付き合いいただき、ありがとうございます。