0 プロローグ
初投稿です。
書き溜めはありません。
30~50話くらいでタイトル回収、100話くらいまで続けたいと思っています。
至らないところが多々あるかもしれませんが、何卒お付き合いのほど、宜しくお願いします。
ちくしょう。
ちくしょう・・・。
・・・。
「ちくしょうめーーー!」
おれはレインボーブリッジの見えるビルの屋上で叫んだ。
きれいな夜景だった。
ここから大通りの方に向かって飛び降りるつもりだ。
だから、これが最期の景色になるだろう。
きれいだと思うと共に、この景色を汚す自分が嫌だった。
だが、もう気持ちは決まっている。
遺書もアパートと、屋上の靴と鞄の3通分準備している。
遺書の内容は、会社関係者へのお詫びとこれまでの経緯、両親への謝罪だ。
恋人はいない。友達はつい最近いなくなった。まさに居なくなった友達というのが自殺理由だ。
「おれらで会社をつくろう。あんなに残業させて、こんだけしか給料が払えないなんてバカげている」
そう言って、そいつはおれを新しい会社に誘った。
「おれは社長ってガラじゃねぇから、よろしく頼むわ~」
おれが社長で、あいつが副社長。
企画に1年以上かけていて、滑り出しは順調だった。やる気も十分だった。
でも、全部終わった。あいつが次の事業資金を持ち逃げして終わった。
あっけない。今、もしあいつに会ったらただ聞きたい。
「なぁ、おれらの会社の成功より、そんな汚い金が欲しかったのか?
それとも、最初から裏切るつもりで会社を興したのか?」
裏切るはずはない、何かトラブルがあったのだ。
そう思って何度もあっちこっちに連絡をとってみようと試みたが連絡は取れなかった。
副社長が失踪したと分かると他の仲間たちは次々と仕事を途中で投げ出した。
残ったのはどうしようもない会社と負債だけ。
もはや建てなおしは不可能だった。
新しい会社で成功して、人を見る目の無い連中つまり前の会社の連中を見返してやろうと思っていたが、
自分も人を見る目が無かったらしい。
飛び降り自殺してトップニュースを狙うのは、金を持ち逃げして連絡の着かなくなった仲間へただメッセージを届けるためである。
おれの人生はおまえが終わらせたのだ、と。
うらみはあるが探し出してどうこうするだけのエネルギーは無かった。
さようならおれの人生、一時の夢。
おまえと作った会社の展望を飲み屋で話していたときが一番楽しかったなんて、皮肉な話だ。
*********
気がつくと闇の中にいた。
「おまえはまだ死ぬべきではなかった」
渋いおっさんの声がした。
ふと気づくと闇の中に光の当たる場所ができていた。
ちょうどそのスポットライトの中に、50歳ぐらいのサンタクロースかと思うような白い立派なヒゲをしたおじさんが居た。
(誰だおっさん?)
声は出なかったが、おっさんには伝わったようだ。
「魂の管理者である」
朗々とした威厳のある声だった。神様と言われても信じたに違いない。
むしろ、神様じゃないことが意外なほどだ。
(へぇ~。じゃあ、ここが死後の世界?何もないね。)
何も無かった。おれの体もない。何も感じなかった。
おれは不意にひどく投げやりで偉そうな言い方をしてしまった。
体がないせいか、恐怖の感情もなくなったのだろうか。ひどく自分という存在が不安定に感じられる。
「ここは、□○×△@・%である。貴様は本来得られるべき□&#$+%を得ずに死んだ。
ゆえに別の世界に行って□&#$+%を得てから#+@$к☆してもらう」
あれ?なんか聞き取れない。何かを確実に伝えているのに、理解できない。
この場所の名前と、おれが今ここにいる理由、転生する理由の全部が聞き取れない。
「別の世界には剣と魔法があり、地球の人間に近いヒューマ以外にエルフ、ヴァイパー、モンスターの3種の種族を選ぶことができる。どの種族を選んだとしても、□&#$+%を得られるよう導かれるであろう」
(よく分からんがファンタジックな世界に転生させてくれるとはラッキーだな。)
仕事漬けで、ここ数年は好きなゲームをやらずじまいだったのを思い出した。
あっちの世界に旅立つ前にひまをくれるのなら存分に楽しみたい。
「望みを言うがよい」
おれはなんというかゲーマーとしては上手いわけじゃない。やり込むタイプではない。
だからこそ、いろいろなキャラやいろいろな武器に手を出すのだ。
いろいろな役を見て、感じることが楽しいのだ。
(全部の種族が使ってみたいです。4種族全部。剣も魔法も全部使いたい。)
だから、その感覚のまま意見してみた。
「実現できぬ」
ちょっと欲張りすぎか。神様みたいに見えるけど、できないこともあるのね。
「無理なのは私のせいではない。おぬし自身が諦めておる。だから、望みが具体的に創造されぬ」
言ったつもりは無かったが、魂の管理者のおっさんには伝わっていた。
(え?おれのせい?)
意外だった。だが、言われてみればその通りだった。
無理だと思って聞いてみている。
少し、自分に腹がたっていた。
無理ではない。無茶ではない。
新しい会社を興すときに、笑って引き止める同僚を振り切って独立したのだ。
思い出すのだ。おれ。やればできるはずだ。
まずは一番に思いついたアイディアを問う
(4回転生するのもありなの?)
「できる。ただし、その都度記憶は消される。ゆえに、4回転生したことを理解することできぬ」
そういう可能性はあった。記憶をリセットされるのでは、望んだ形ではない。
(ふーん。それじゃあ、4人に同時に転生したい。4種族にそれぞれ俺が生まれるようにしてほしい)
「もっとイメージをしろ」
えーと、4人の視点を統括する俺が居て、複数視点を同時に得る。
感覚は全て共有。集中すれば一人の詳細操作が可能。集中していないキャラについては、事前に登録している動作を簡易的に操作できる。4人の位置関係はミニマップで把握可能。
昔やったら複数のゲームの画面が入り混じった。
「理屈は完成した。矛盾はあるかもしれぬが、そのイメージで実現することは可能である。30秒後に転生させよう。追加したい仕様は30秒以内に想像せよ」
(えっ、30秒!?短すぎる。チートとか無いんですか?)
「残り20秒だ。実現可能なイメージにせよ」
(えーと、レベルアップごとに多彩な魔法が使えるようにしてください。
エルフは回復と防御、ヴァイパーは攻撃魔法、ヒューマは肉体強化に剣の才能、モンスターは再生能力と補助魔法 )
「残り5秒」
(あ、最後に俺4人で一緒のチームが作れるように導いてください。)
大事なことだ。全員集合できなければ、ゲームにも物語にもならない。
それに…そうだ。他人が信用できないなら、全員おれにすればいいのさ。
「叶った。次に会うときにはおぬしが□&#$+%を得たときであろう」
その最後の言葉がまた聞き取れないまま、おれの意識は白んでいった。