愛のカタチ
弘樹は恋人の杏のお見舞いに来ていた。が……。
「なぁ、俺たち付き合ってるんだよな」
「そうだけど――。もう弘樹の顔見たくない! 出て行って」
「そっか――。分かった。ばいばい」
弘樹は病室を出て家に向かった。
「ただいま」
弘樹が家に帰ると弘樹の母、美香が外着で玄関に行こうとしていた。
「お帰り。母さん今からパートだから。ご飯出来てるからチンして食べてね」
「うん。いってらっしゃい」
「何かあったの?」
「ううん。何でもないよ」
「そう。じゃあ行ってくるわね」
「いってらっしゃい」
弘樹は美香に言われた通りご飯をレンジにかけ、食べ始めた。
ご飯を食べていると杏からメールが来た。
『弘樹へ。今日はごめんね。あんな冷たい態度とっちゃって。本当は弘樹の事大好きだよ。でもね、私もう死んじゃうんだ。死ぬところなんか弘樹に見せたくない。今までありがとう。本当に大好きだよ。杏』
メールを見て弘樹は玄関を飛び出した。
「杏、行かないでくれ。俺の傍に居てくれ。俺も君の傍を離れないから」
しかし弘樹の願いは届かなかった。
杏の病室についた弘樹だったが杏が居たはずのベッドはもうすっかり綺麗になっていた。
まるで最初から誰もいなかったかのように。
「杏――」
弘樹は人目もはばからず泣いた。
すると
「弘樹、来てくれたんだ。ありがとう。弘樹、大好きだよ。でもいつまでも私にとらわれずに先に進んでね。じゃないと怒るよ。私はもう行かなきゃ。ばいばい弘樹……」
「杏!」
振り向いたがそこには誰もいなかった。
愛し合うもの誰もが傍にいたい。
どんな時でも――。
愛し合う者同士いつでも傍にいたい。
誰もがそう思うはずだ。
しかしそう出来ない者も多くいる。
真の愛のカタチとは何なのか。