自動運転は変態?
太田は両腕を組み、天井を見上げた。
そのまま、椅子の背もたれに身を預けた。
いろいろ思考を巡らせても、良い案は出なかった。
自動運転の導入についてだった。
国土交通省の大臣である太田は、自動運転の導入にどうしても踏み切れない。
しかし、このままなら日本の自動運転車の技術は世界に後れを取るのは明らかなのだ。
でも、聡明な太田には、導入後の悲惨な事故の映像が見えてしまうのだ。
推理、推測というレベルではない、事実に基づく確実なイメージだ。
と言っても、自動運転のない、今でも起こる事故。
だったら、しょうがないか・・・
しかし、確率が上がるのは予想できるのだ。
太田は幾つものシミュレーションをしては首を振った。
「外部頭脳に頼るか・・・」
太田は呟いた。
端末を手に取る。
太田はため息と共に現在の状況を吐き出した。
そして、太田は答えを待った。
「変態?
ヘンタイ?」
「バック?」
「ゴルゴ?」
太田は何度も頷いた。
「ありがとう。
ヒントになった。
さすが、名探偵。
藤崎、借りは今度返す」
太田は端末を上着のポケットにしまい、大きく伸びをした。
「これで自動運転を進められる。
ヘンタイ走行とはな・・・」
太田は椅子に座り直し、ノートパソコンに向かう。
「自動運転でも後方は守れないからな・・・」
太田は自動運転と非自動運転が混在した状態を危惧していた。
スピード違反できない自動運転車に対し、
イライラしたドライバーは車間距離を詰める。
自動運転車は危険予知しブレーキをかけた時、
後続車はブレーキが間に合わず、追突してしまう。
そして、大型車の場合、大事故になってしまう。
そんな事故が多発するのを太田は予想していた。
「ゴルゴとはな・・・
藤崎の奴、相変わらず面白い。
相手に背後を取らせないようにすればいいって」
もちろん、漫画のゴルゴ13である。
スナイパーのゴルゴことデューク東郷は人に後ろを取らせない。
「後ろに、もう一台、自動運転車を走られて、
編隊走行させれば、追突されないって」
ヘンタイとは変態ではなく、編隊だ。
後方のガード用にもう一台、自動運転車を使うと言うのだ。
「経済効果も上がる・・・」
太田はニヤリとした。
「まあ、そんなことは無理だろう。
でも、ドライバーに後方の車が自動運転車じゃいないとういう情報を与え、
後方のエアバッグを装備すれば、いいということか」
こうして名探偵藤崎誠は太田の悩みを見事に解決した。
そして、自動運転が日本に導入されるキッカケになった。