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世界最優秀民族が異世界にやってきました  作者: mk-3
第二部 伝説の生放送
34/37

選択肢 2

 前戦の兵士が死にものぐるいで戦う中、前戦の隊長は……


 誰よりも早く逃げていた。


 主にアメリカ軍などでは部下を見殺しにした責任者は出世できない。

 卑怯で尊敬できない行動だからだ。

 だが韓国ではそうでもない。

 南スーダンでのPKO活動中に弾薬が足りなくなり、韓国の要請で自衛隊が1万発の銃弾を提供したが韓国はそれに対して遺憾の意を表明したと韓国の新聞は伝えている。


(※http://www.sankei.com/world/news/131225/wor1312250001-n1.html)


 つまり積極的に見殺しにしろという意味だ。

 これには彼らと親しい日本国内の左側の勢力も同じことを言っている。


(※http://www5.sdp.or.jp/comment/2013/12/24/%E5%8D%97%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%B3%EF%BD%90%EF%BD%8B%EF%BD%8F%E6%B4%BE%E9%81%A3%E9%83%A8%E9%9A%8A%E3%81%AE%E5%BC%BE%E8%96%AC%E8%AD%B2%E6%B8%A1%E3%81%AB%E6%8A%97%E8%AD%B0%E3%81%99%E3%82%8B/)


(※http://www.seihokyo.jp/seimei/2013/131227-gichou2.html)


 つまり彼国では見殺しが社会通念上当たり前の行為なのである。

 兵士など上級国民の駒でしかなく、日本に弾薬を要求するくらいなら全滅しろ。

 これが彼らの社会常識である。

 そうでなければ日本に遺憾の意を伝えるわけがないし、新聞もそんなことをした政府を非難するだろう。

 日本人にはまったく理解できない考え方だが、きっとこれは儒教的に正しいのだろう。

 文化の違いによる違和感は珍しくない。

 我々には彼らの文化を理解する義務はない。

 同じように彼らの文化に口出す権利はない。

 ただ日本へ剥いた牙に対してのみ事実を積み重ねて抗議をすればいい。

 彼らの国内問題はそういう社会構造なのだとあきらめるほかはない。


 この隊長も当たり前の行動をしただけだった。

 上役のために大勢の兵士が死ぬ。

 たとえ日本人が理解できなくともそれは誇らしいことなのだ。

 だが異世界は、門はそれを許さなかった。

 隊長の体が膨らむ。


「ああああああああああああ!」


 全身がみるみるうちに水死体のようにぶよぶよになる。

 目は飛び出て水泡眼のようになり、思考は途切れ途切れになった。

 これが指揮官一人なら問題はなかった。

 この時逃げ出した隊長は多数に及んでいたのだ。

 それらが後ろから兵士を襲う。

 不死の化け物は兵士の頭にかじりつき、毒の体液をまき散らす。

 恐怖で逃げた兵士が今度は怪物に変わり山のように犠牲者を増やしていった。

 素人である道彦に出し抜かれた各国のジャーナリストたちは命をかけてその地獄ような有様を撮影していた。

 学生に手柄をとられたという事実が彼らの恐怖を麻痺させ、ありえないほど近距離まで近づいていたのだ。

 その生々しい写真や映像は後に様々なところで使われることになる。

 そしてさらに近いところにいた集団がいた。

 赤日と冥日のテレビクルーと記者たちである。


「な、なぜだ! 世界最優秀民族様の崇高なる軍に守られていたはずなのに!」


 すでに異世界騒動での記者やテレビクルーの累計殉職者は10名を超えていた。

 今回は薄汚いあのネトウヨ高校生に勝つために生放送までしているというのに!

 なぜだ! なぜ! 絶対的正義である赤日の社員がこんな目に遭わなければならない!

 定年後は韓国の大学の教授になって日本の悪口を言いふらすつもりだったのに!


「クソ! こんな重いカメラは邪魔だ!」


 生放送中なのにカメラマンがカメラを放り投げた。


「バカな視聴者に付き合って死ねるかよ!」


 放り投げられたカメラがカメラマンの声を拾った。


「キャー! 成田さん! 体が、体が大きく! 来ないで! やめて! 来ないでよ!!!」


 女子アナの悲鳴がした。


「肉、肉、肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉!!!」


 悲鳴、叫び声、それは最初こそ大きな声だったが次第に小さな声になる。


「やめて! 離して、離してよう……」


 悲鳴は懇願に変わった。

 そしてカメラに血しぶきがかかり、声はやんだ。

 現場には夜に使うはずだった覚醒剤だけが残された。



 道彦は考えていた。

 どうすればあの怪物を止められる。

 この場合は止める方法そのものを考えるのではない。

 どうやったら門が困るのかを考えるべきだ。

 道彦は走りながら周囲をうかがった。

 未来の飛行機が見えた。


「山岡さん! あれは使えますか!?」


 道彦は山岡の上着を引っ張って必死に飛行機へ向かって指をさす。


「そ、そうか! ここにある武器を使えば……」


 山岡は近くにいた金髪の男に英語で話しかける。

 男とその部下は飛行機へ全速力で走る。


「足止めするぞ!」


 山岡たちは再びキムへ総攻撃をかける。


「手足は狙うな! 頭を狙え! 脳みそを再生するまでは動けなくなる!」


 キムの頭に弾丸が突き刺さるたびにキムは自分のことを忘れていった。

 なぜ道彦を憎んでいるのか?

 自分が何をしようとしているのか?

 自分が何者なのか?

 その全てを忘れていった。


「あああああああああああああ!」


 ついには言葉まで忘れキムはわけがわからなくなりながら泣き叫んだ。

 痛い。痛い。痛い。痛い。

 キムの体は耐えがたい苦痛を感じていた。

 暴走する癌細胞はキムの神経を締め付けていた。

 殺してくれ。

 どうにか殺してくれ。

 銃弾の雨あられを浴びながらキムは暴れていた。


「機関砲を発射する! 全員退避!」


 山岡が叫び、道彦たちは死ぬ気で逃げた。

 未来の戦闘機の攻撃が始まり回廊はめちゃくちゃに破壊されていく。

 キムは一瞬でひき肉になり、毒の体液をまき散らしながら爆発した。


 兵士たちから歓声が上がる。

 だが道彦はそれでも考えていた。

 門を出し抜く方法を。

 その時、道彦の頭にプランが浮かんだ。

 それは二つのプランだった。

 一つは予定通り兵士たちを元の世界へ帰還させること。

 そしてもう一つは知識の泉を破壊すること。




 どちらを選びますか?



 元の世界への帰還


 知識の泉の破壊

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