ノーマル・ベストエンディング 共通部分3
◇ノーマル・ベストエンディング 共通部分3
道彦たちは兵士たちを一発ずつ殴って正気にさせた。
正気になった兵たちも面白がって正気を失った兵を殴りつける。
これには道彦や遠藤ですら薄笑いだった。
戦争のせいか、それとも異世界になにかの原因があるのか、道彦たちは暴力的になっていた。
道彦は大統領を引き渡す。
道彦とエレインは安堵のため息をついた。
正直言って大統領の世話はもううんざりだったのだ。
大統領を引き渡すと道彦たちは別の兵士にキムの居場所を伝える。
数人の兵士が知識の泉へと急いだ。
道彦たちのやるべき事は終わった。
後は帰る儀式をするだけだった。
道彦は息を吐いて脱力した。
あとは兵士たちがなんとかするだろう。
これで終わりなのだ。
だがそんな甘い考えが通じるはずがない。
「ぎゃああああああああああッ!」
知識の泉のある建物から悲鳴がした。
発砲音。手榴弾の破裂する音までする。
「なにがあった!」
山岡が怒鳴った。
声にいくらか遅れてぴしゃりと音がした。
数百メートルも離れている道彦たちの下へなにかが放物線を描いて飛んでくる。
ごとりと音がしてなにかが床に落ち、ゴロゴロと転がった。
それには目と鼻と口があった。
それは兵士の頭だった。
その顔は恐怖に歪んでいた。
「ひいいいいいッ!」
兵士の一人が叫んだ。
遠藤も釣られて「ひいッ!」と変な声を出した。
ここ数日で死体をさんざん見てきた道彦はなんとか声を飲み込んだ。
「チョッパリイイイイイイイ!」
なんとも形容しがたい雄叫びを上げながら、何者かが道彦たちの方へ走ってきていた。
人間ではない。それは化け物だった。
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス」
化け物は肥大した頭部からよだれを垂らしながら呪詛を吐いた。
頭部に比べてバランスが悪い小さな脚でヨタヨタとしながら道彦たちの方へ異常なスピードで迫ってくる。
「撃てー!!!」
誰が言ったのかその声を境に兵士たちが一斉射撃を開始する。
化け物の体に穴が空き、体液が飛び散る。
その体液を浴びた回廊の床からじゅうという音がし、体液を浴びた部分が腐食する。
「あの体液は毒だ! 浴びるな!」
その言葉に全員が息を呑んだ。
はじめてファンタジーっぽい生き物が現れた。
ほぼ全員がモンスターと聞くとJRPGのような敵を想像していた。
だが実際はモダンホラーの悪役のような醜悪な生き物だった。
兵士がグレネードを投げた。
数秒経ってから爆発する。
グレネードは化け物の足下で爆発し、腐食する体液がまき散らされる。
「動きは止まったか!?」
だが化け物の脚は体液をばらまくと一瞬で傷が癒える。
いや癒えたのではない。無秩序に肉が、細胞が増殖し盛り上がったのだ。
「ああああああああ、スズキ、コロスコロスコロス」
化け物が悲鳴を上げる。
「癌細胞だ!」
道彦が叫んだ。
「あの化け物は全身が癌細胞みたいなものなんだ!」
兵士たちは自分たちが戦っているのが本物の化け物だと理解した。
「支援火器で潰すぞ!」
山岡の声がした。
銃器に詳しくない道彦から見て、比較的大きな銃が発射され、支援火器での弾幕、面攻撃が化け物を襲う。
穴だらけになった化け物が悲鳴を上げた。
脚が穴だらけになり化け物が倒れた。
そこに数発が化け物の頭に命中し肥大した頭がぐちゃりと潰れた。
「ああああああああああ! オレノオレノキオクガアアアアアアアアア!」
化け物が悲鳴を上げた。
「キムだ……」
道彦がつぶやいた。
「なにがです?」
エレインは撮影をしながら聞いた。
「あの化け物はキムだ。ゲートが僕たちの邪魔をするために本当の魔王にしちまったんだよ!」
道彦は吐き捨てた。
道彦の胸は嫌悪感でいっぱいだった。
ゲートにもキムにもそれらを作った自称神にもだ。
化け物は無秩序に肉を増やすと、すぐに起き上がる。
「ああああああああああああああああ!」
もう一度グレネードが投げられ爆発する。
爆発が直撃し化け物の脚がちぎれた。
ちぎれた脚が爆発し、辺り一面が腐食した。
「ああああああああああああああああ!」
肉が盛り上がりちぎれた脚が生えてくる。
長さが合わないためヨタヨタとしたその揺れが大きくなる。
「コロスコロスコロス……」
「くそ! 止まらない! 全員退避!」
兵士たちは銃を撃ちながら下がる。
それを見た化け物が走る勢いを増す。
殿を勤めた兵士が追いつかれる。
「うわああああああああああああああ!」
化け物と兵士が叫んだ。
次の瞬間、化け物が破裂した。
化け物の肉が弾け飛び、噴出する体液に兵士は巻き込まれた。
兵士が一瞬でドロドロの液体に変わり、回廊の壁が崩れる。
化け物は無秩序に肉を盛り上げまた道彦たちに向かって進撃を開始した。
この時、道彦たちは知らなかった。
済州島に繋がる門も地獄絵図になっていたのだ。
門の外に出ようとする化け物へと変貌した韓国軍兵士たち。
門の外の兵士たちは元同胞に容赦なく榴弾を撃ち込む。
ちぎれ、潰れ、焼けても……全身をバラバラにされてもなお化け物は突き進む。
最新兵器でもこの単純な歩みを止めることができなかった。
「門より外に出すな! 死んでも止めろぉッ!」
1000年の奴隷生活。
それがその場にいた韓国人全員の頭を掠めていた。
意地でも、いやどんな犠牲を払おうとも外に出してはならない。
彼らは必死に戦うしかなかった。
すいません風邪ひきました。
あと3話くらいで終わる予定です。




