BAD END
◇分岐ルート キムを殺す
道彦は後頭部に突きつけた拳銃の引き金を引いた。
乾いた音が教会の中に響く。
反動は軽かった。
キムはびくりと動くとまるで破裂したスイカのようになって転がった。
まだ指はピクピクと動いている。
道彦は確認のためもう一度キムを蹴る。
今度は生きていた時とは違い、体は重く反応もほとんどなかった。
絶命したのだろう。
これで終わりだ。
道彦は知識の泉に手をかざす。
道彦は力に溺れるつもりはない。
もう終わりにするつもりだ。
道彦はなにも持ち帰る気はしなかった。
「大統領。ゲートを開きます」
それは完璧な発音の韓国語だった。
「韓国語を話せたのか?」
「いえ、知識の泉の効果です。すぐに消えますよ」
道彦は知識の泉からゲートを起動した。
すると気持ちの悪い教会だった建物は徐々に神社へと変貌していく。
アクセス権を取り戻したに違いない。
発電所のタービンのような轟音が鳴った。
中は神社の本殿のように変貌し、奥行きがどこまでも伸びる。
奥がどこまで続いているかわからないほど伸びた部屋のその先が光った。
「ゲート起動完了。兵士を帰還させる」
すると、外で戦っていた兵士たちがわらわらと現れた。
その目は正気を失っていて皆一様に呆けていた。
道彦はそれを当然のように受け止めていた。
一瞬の静寂の後、道彦が柏手を打つ。
その音で全員が正気を取り戻す。
「え? なんで? ここはどこだ?」
山岡たちがガヤガヤと騒ぎ出した。
それを見て道彦は笑う。
「皆さん、帰りましょう」
道彦は異常なほど広くなった本殿の先にある光を指さす。
「鈴木君……なにがあったんだ?」
「キムを殺して大統領を奪還しました」
返り血を浴びた道彦はなんでもないことのように言った。
その迫力は
「あ、ああ。いやそうじゃなくてあの光!」
山岡が光を指さしていた。
「山岡さん。ゲートを閉じます」
「な、なに?」
「争いの原因はゲートです。ゲートを閉じてこの世界と我々の世界を守ります」
「我々の……どういうことだ?」
「僕は歴史を見ました……」
道彦の話は全員を驚愕させた。
まず、韓国の失態のせいでPKFが入り、その後アメリカが不平等条約をむりやり締結させてゲートを横取りする。
当然、中国が異議を申し立てて5年間ほど冷たい関係を続く。
この間にアメリカとその同盟国はありとあらゆる調査を施す。
その結果、この世界の面積が地球の2倍もあるということ、ありとあらゆる資源が豊富にあること、人類はそのほとんどに進出してないことがわかる。
すると口減らしが必要な中国、アフリカ諸国が口を挟む。
だが資本主義が行き詰まったアメリカとその同盟国も、この利権を手放すことはできなかった。
利権を自分たちの仲間だけで独占するために中国やロシアをのけ者にしたのだ。
異世界から彼らを締め出し、ついには軍事衝突に陥る。
お互いに核兵器を使うほどは狂ってなかったが、無難な着地点を提示するほど利権は小さくなかった。そのためひたすら戦争は長期化した。
そして朝鮮半島をめぐっての大戦争が発生、地形が変化するほどの火力での戦争で韓国は崩壊。
己の力を超えた利権を持ってしまったがための悲劇であると言いたい所だが、実際はいつものように米中両国の間をフラフラとした挙げ句に滅ぼされたというのが真相である。
その韓国の態度に巻き込まれ米中両国は多大な被害を出す。
両国とも兵士が無駄死にし、退役軍人のPTSDの治療費で莫大な金を払い、それでも莫大な利権のために戦いをやめることはできなかった。
そんな両国に対して被害者ヅラした韓国・北朝鮮人は各地で難民となり、売春と覚醒剤をはじめとするありとあらゆる犯罪に手を染め両大国を内部から腐敗させていった。
「こうして人類は停滞と膠着状態に入ります。新しい技術の進歩はありますが現代ほどのスピードではなくなります」
最終的に北朝鮮が水爆を開発するが、その頃にはすでに核兵器は陳腐化していた。
だが滅ぼすには十分な理由だった。
未来の兵器で焼き尽くされた北朝鮮も崩壊する。
そしてそれを見計らったようにゲートは突如として消えた。
こうして誰も得せず死人の山を築いただけで戦争は終わった。
「げ、ゲートを作ったのは悪魔なのか……」
山岡がつぶやいた。
「さあ? 少なくとも友好的なだけではないようです」
道彦はわざとそう言った。
本当はわかっていた。
ゲートはただそこにあるだけだ。
神のような存在が気まぐれに作った装置なのだ。
神は善意だったとは思うがそれに惑わされた人間は破滅する。
「……だから……閉じるんだね」
「ええ。こんなものは人類の手には余ります。閉じましょう。山岡さん。全ての国に撤収命令を出させてください!」
「あ、ああ! わかった」
山岡が兵士たちのそれぞれのリーダーに話をし撤退を促す。
そんな混乱の中、道彦はエレインに手を差し出した。
「ありがとう。君のおかげで命を拾った」
呼び出したことは不問にした。
本当に道彦は勇者だったのだろうか?
それはわからない。
二人には恋愛感情はない。
だがカメラマンとリポーター、仕事仲間としての友情のようなものが芽生えていた。
「道彦様……」
「はい、スマホ。もうなるべく勇者を呼び出さないでくれ。今回の件でこっちの世界もめちゃくちゃだよ」
そう言って道彦は笑う。
「はい。……もう最後にすると伝承に書き残します」
「これでお別れだね」
「……はい」
エレインは道彦の手を取る。
二人は握手をする。
今生の別れになることを道彦は知っていた。
ゲートの閉門。それは勇者もしくは勇者の巫女がこの世界に残って閉じなければならないのだ。
「鈴木君! 撤退命令を出した! 村民も受け入れ準備も完了した! 帰るぞ!」
「先に行ってください」
道彦は兵士たちの後ろをとぼとぼと歩く。
数時間をかけてエレインと話を続け語り合った。
そして光の前に辿り着く。
最後に残ったのは道彦とエレインと二人だけだった。
「じゃあ元気で」
「はい。道彦様も」
道彦は手を振った。
エレインも手を振る。
道彦は光の中に入った。
◇
5年後。
「被告人を懲役15年とする」
裁判官が判決を読み上げた。
そこは無機質な法廷。
弁護士が悔し涙を流す。
5年も争った。だが負けた。
道彦の懲役が確定したのだ。
道彦は数件の殺人、大麻取締法違反、私戦陰謀罪などの容疑で逮捕された。
ほとんどの罪では起訴されなかったがキムをテレビの前で殺したことだけは許されなかった。
エルフの難民たちは道彦に感謝状を送ったがそれは効果がなかった。
道彦がカメラの前でキムを殺したことにより、世論は手の平を返したのだ。
勢いづいた野党は道彦を罰することを要求。
芥川ですら道彦を擁護することができない空気になってしまった。
戦争を止めたというのに道彦は公の敵として扱われた。
異世界に行ったのは自己責任。
あれほど海外でテロリストに捕まった人間を擁護していた野党は自己責任論で道彦を責め立てた。
拉致問題解決の邪魔をしたその手腕を遺憾なく発揮したのである。
パコ大統領や兵士たちはもっと悲惨だった。
彼らは国家反逆罪で起訴され、ほとんどのものが銃殺刑に処された。
パコ大統領は裁判所の前で銃撃され命を散らした。口封じである。
韓国国内では魔女狩りが蔓延し、多くの国民が戦争賛成派の右翼主義者として処刑された。
国連の事務総長をやっていた韓国人政治家も「なぜ止めなかった」と理不尽な言いがかりをつけられ、韓国人による自爆テロでこれまた葬られた。
その点、遠藤はうまく立ち回った。
道彦を擁護しつつ、暴力はいけないというスタンスを維持し非難されることはなかった。
だが日本にはいられなくなり、海外の大学へ進学した。
村人は日本に適応した。
もともと日本語と同じ言語を話すし、彼らは真面目だった。
彼らは道彦の弁護を支えてくれた。
署名活動をし、感謝状を贈り、記者会見も開いた。
だが日本のメディアはそれをまったく報道しなかった。
そしてその成果が実り、道彦は無期懲役になった。
日本の司法は死んだ。
この日、道彦が死刑にならなかったことをメディアは一斉に非難した。
もうこの空気を覆すことは誰にもできなかった。
◇
さらに10数年後。
道彦の仮釈放が決まった。
刑務所の壁の外に10年数年ぶりに出ることになったのだ。
あれから日本は変わってしまった。
道彦がキムを殺したせいで被害者ぶるのが得意な千年被害者たちの工作により世論は逆転、韓国人たちは日本を支配することに成功してしまった。
音楽番組の半分をワンパターンなフレーズのKポップを流さなくてはならなくなったし、タレントは韓国人ばかりになった。
全てのテレビは繰り返し震災と原爆を揶揄する番組を報道し、原爆は神の恩寵というのを表明しても誰も抗議の声を上げなくなった。
ニュース番組は韓国の賞賛にあふれ、日本人は未来永劫謝罪するのが社会常識になった。
赤日の「日本人は子々孫々、未来永劫謝罪しなければならないけど、在日の子どもたちにはあらゆる罪はないよ」という人種差別としか思えないメッセージに疑問を挟む余地はなくなった。※
(※http://www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=editorial_news_two)
優生保護法が復活し、遺伝的に劣等とされた日本人の堕胎が奨励され日本人は絶滅寸前に追い込まれていた。
それどころか日本人は殺してもいいという赤日と冥日のキャンペーンは日本に蔓延し、日本人への殺人は10倍以上に増えたが起訴件数は半分以下になった。
異論を挟む人間は大阪市によって警察権を与えられた革命SSによって逮捕され強制収容所送りにされた。
そこは劣悪な環境で、強制労働とコレラと結核の蔓延で大勢が死んだ。
さらには増えすぎた受刑者を減らすための策として大勢がガス室送りにされ処刑された。
それを見て韓国人は「日本猿は放射能で死んでください」と喜んだ。
全ての日本の技術は1000年被害者の国に奪い取られ、世界遺産は彼らに汚損された。※
(※http://u1sokuhou.ldblog.jp/archives/50477373.html)
すでに日本人は彼らの奴隷に成り下がってしまったのだ。
こうして崩壊寸前の祖国を見限って日本を支配した彼らは無邪気に日本人への虐殺を繰り返した。
ゲラゲラ笑いながら日本人を抹殺しようとするが、そんな彼らに反対するものはいなかった。
いや反対するものは強制収容所送りになって帰ってこなかった。
日本中に革命の象徴として有川の銅像が建ち、野川の平等を得るための戦いと死が教科書に掲載された。
韓国への土下座旅行が修学旅行として制度化され、いつしか誰もそれを疑問に思わなくなった。
街を歩いていたら「チョッパリ死ね」とチンピラにいきなり殴られるのはいつしか日常の光景になっていた。
志ある日本人は地下に潜り抵抗を続けた。
そんな日本人たちは道彦を日本滅亡の主犯と罵るものと、抵抗の象徴として神格化するものに分れたのだ。
仮釈放の日が来た。
道彦は刑務所の門を出る。
家族はいない。
すでに道彦の家族は10年前にガス室送りになっていた。
外にはエルフたちや地下に潜った日本人革命家が集まっている。
彼らは道彦を車に乗せた。
男は車内で道彦に日本刀と拳銃、手榴弾を渡す。
道彦はそれを受け取る。
この日本を破滅に追い込んだやつを殺す。
それが道彦にできる日本への最後のご奉公だった。
「今日は死ぬにはいい日だ」
道彦はつぶやいた。
道彦はこの人生の中で何度も思い出すことがある。
キムを殺したことだ。
殺す必要はなかった。
引き渡すべきだった。
だがあのときは頭に血が上っていた。
年をとった今ではよくわかる。
だが……
本当にあのときの判断は自分のものだったのだろうか?
もしかすると門の都合のいいように踊らされたのではないだろうか?
もしかすると門は神の作ったものではなく悪魔の作ったものではないだろうか?
あのとき殺意に抵抗していれば……
あのとき殺意に抵抗してさえいれば日本はめちゃくちゃにならなかったのではないだろうか?
いや……それは結果論だ。
自分の起こしたことの結果には責任を持たなければならない。
道彦は窓から外を見た。
桜が咲いていた。
これが最後の桜だ。
道彦は桜をまぶたに焼き付けた。
BAD END
BAD END です。
次回からはノーマルエンドとベストエンドを実施します。
10万文字……行くのかが問題です……カクヨム的に。
ベストエンドはかなり長いので大丈夫だとは思うんですが。
今回は韓国は負け、北朝鮮も負け、でも国内の千年被害者は大勝利です。
わざと酷いエンディングにしました。
どうがんばってもあそこまでは酷くならないと思います。
でも報道ステーションとかが言ってた右派が政権を取った未来をパロディにするためにあそこまで酷くしました。
歴史的には虐殺をするのは左派の方が多いです。
国の体制を変えますから。
本当はキム豚殺した方が面白いんですが、もっと悲惨な目に遭わすために生き残らせます。
お返事コーナー
>Kの国はイメージとちょっと違うな
まさにその通りです。
Kの国というよりメディアの作った嘘を誇張するために無茶な行動をとらせています。
つまりメディアの言っている事はこうなんですよと。
あまりにもメディアの言うことは単純化されすぎているので、善悪を入れ替えるだけでこの通り、違和感バリバリなわけです。
議会制政治ですから悪の帝国っていう脚色は無理がありますし、ただ悲惨だよというのも無理があるなあと思います。
例えば、ブッシュ時代のアメリカを見るとなんでああなったと思うほど酷いですが、ああいうのが別の国でも起こったんだなあと推測できるわけです。
どんな大国でも常に合理的に動けるわけではありません。
かと言って常に間抜けなわけではありません。
有り得ないほどの慰安婦に遊び半分に畑を焼き尽くしたりと無駄な破壊を繰り返す。北斗の拳のモヒカンより悪い連中。
ねえよと思うのです。
でも彼らの建国神話ではそういう設定です。
一度物理的に可能かどうか考えて頂きたいものです。
資料
日本国刑法第3条
第3条
この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。
第108条(現住建造物等放火)及び第109条第1項(非現住建造物等放火)の罪、これらの規定の例により処断すべき罪並びにこれらの罪の未遂罪
第119条(現住建造物等浸害)の罪
第159条から第161条まで(私文書偽造等、虚偽診断書等作成、偽造私文書等行使)及び前条第五号に規定する電磁的記録以外の電磁的記録に係る第161条の2の罪
第167条(私印偽造及び不正使用等)の罪及び同条第2項の罪の未遂罪
第176条から第179条まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦、集団強姦等、未遂罪)、第181条(強制わいせつ等致死傷)及び第184条(重婚)の罪
第199条(殺人)の罪及びその未遂罪
第204条(傷害)及び第205条(傷害致死)の罪
第214条から第216条まで(業務上堕胎及び同致死傷、不同意堕胎、不同意堕胎致死傷)の罪
第218条(保護責任者遺棄等)の罪及び同条の罪に係る第219条(遺棄等致死傷)の罪
第220条(逮捕及び監禁)及び第221条(逮捕等致死傷)の罪
第224条から第228条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未遂罪)の罪
第230条(名誉毀損)の罪
第235条から第236条まで(窃盗、不動産侵奪、強盗)、第238条から第241条まで(事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷、強盗強姦及び同致死)及び第243条(未遂罪)の罪
第246条から第250条まで(詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺、恐喝、未遂罪)の罪
第253条(業務上横領)の罪
第256条第2項(盗品譲受け等)の罪