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世界最優秀民族が異世界にやってきました  作者: mk-3
第一部 世界最優秀民族が異世界にやってきました
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道彦Ⅲ 怒りの異世界

 それは爆弾だった。

 道彦の耳がきいぃんと鳴った。

 道彦はどこか人ごとのように思い出していた。

 スナイパーはまず敵兵をなぶり殺しにする。

 すると仲間を助けようと敵兵が近づいてくる。

 それをさらになぶり殺しにする。

 そうすれば実に効果的に敵を排除することができるのだ。

 そう。

 これはトラップだ。

 子供を取り返しに来たエルフを殺すための罠だ。

 道彦がそこまで考えると耳鳴りがやんだ。


「道彦様!」


 エレインが道彦に駆け寄ろうとしているのが見えた。

 スマートホンを下に降ろしてしまっている。


「エレイン! 俺の事はいい! 撮影するんだ!!!」


 道彦は怒鳴った。

 エレインはびくりとするとスマートホンを道彦に向けた。


「違う! あの子を映すんだ! ヤツらの犯罪を世界中に知らせるんだ!」


 脇腹から血を出しながら道彦は少女の無残な遺体を指さす。

 エレインは泣きそうな顔をしてかつて少女だったものを撮影した。


 このとき世界中で道彦を見守っていた人々の中で運の悪いごく少数が心臓発作を起こし救急車で運ばれた。

 世界中で暴徒が韓国人経営の商店を襲い、大使館にビール瓶が投げ込まれた。

 それはあまりにもショッキングな映像だった。

 21世紀だというのに世界中で蛮行は行われている。

 イスラム国に捕らわれ販売される女性。

 地雷で足をなくす子供たち。

 爆弾をおもちゃだと思って拾い死んでしまった子供。

 世の中には理不尽があふれている。

 だがそれはどこか遠いところで行われていることだ。

 全てをカメラに収められたのは初めてだった。

 人々は激怒した。

 世界中の人々はパコ大統領のSNSに罵詈雑言を書込んだ。


「この人殺し!」


「戦争犯罪者め!」


「悪魔め!」


「お前を殺してやる!」


「絶対に許さない!」


 アノニマスは韓国サーバーへ無差別DOS攻撃を行いありとあらゆるサーバーがダウンした。

 世界の主要メディアは韓国を非難する特集を組んだ。

 素早い主要企業は韓国企業との提携を解消する旨の声明を出した。

 夜中だというのに韓国の損失は天文学的数字になろうとしていた。


 だが道彦はまだそれを知らない。

 血を垂れ流しながら這いずっていた。

 横っ腹に刺さったもの。

 それは壊れたドアの破片だった。

 もし動脈が傷ついていたら抜いたら死ぬ。

 道彦はそう判断し、それを抜かないことにした。

 フィーナとアリアが肩を貸し、なんとか動けるようになる。

 すでに顔は青くなっていた。


「道彦様。い、今ヒールをかけます!」


 フィーナはそう言うと道彦の脇腹に手を当てる。

 アリアは問答無用で道彦の脇腹から木片を抜く。

 その方が抵抗が少ないからだろう。

 道彦はビクッと震えた。

 そしてフィーナの手から光が放たれる。

 するとピタリと血が止まった。


「ヒールって……治ったの……」


 道彦が聞いた。

 傷は塞がったようだがフラフラとする。


「い、いえ。ヒールにはそこまでの力は……血を止めただけです」


 道彦は力なく頷いた。

 それでも痛くないだけ大分マシだった。

 そんな半死半生の道彦たちに男の怒鳴り声が浴びせられた。


「ふはははははは! このウジ虫が! ガキを餌にすると簡単に罠に引っかかりやがるぜ!」


 男は指をさしながらゲラゲラ笑っていた。

 それすらも生中継されているとも知らずに。

 しかも道彦は韓国語を知らない。

 何を言っているのかわからなかった。

 だがその態度は友好的なものではないことだけはわかった。

 道彦が睨み付けていると闇から男たちが現れた。

 男たちはあのクソ重い銃を腰だめに構えていた。

 ああ、重いからあの構えなんだと道彦は妙に納得した。


「この薄汚いチョッパリが! ぶち殺してから犯してやるぜ!!!」


 弱者には自己の実力の200パーセントを出す。

 それが韓国人である。

 調子に乗った韓国人たちがタコ踊りを踊った。

 言葉こそわからないが集団リンチでなぶり殺しにするつもりなのだろう。

 その姿の表情も醜悪そのものだった。

 結局、道彦は兵士と戦うことになってしまったのだ。


 男たちの一人が警告も無しに道彦を拳銃で撃った。

 道彦は悲鳴も上げずに倒れ込んだ。

 最初は棒で突かれたかのようだった。

 だが倒れた瞬間、全身が悲鳴を上げた。


「ぎゃああああああああッ!」


 それは道彦自身でも驚くほどの声だった。

 15年の人生の中で一番痛い。

 先ほどのドアの破片も痛かったが銃弾は次元が違った。


「てめえは女たちが犯されるのをそこで見てろ!!!」


 男が叫んだ。

 言葉の意味はわからなかったが何が言いたいのかはそのゲスな表情でわかった。

 殺す。

 殺してやる。

 道彦の胸が殺意でいっぱいになった。

 エレインはスマホで一部始終を撮影していた。

 それを見て男たちが笑う。


「おい、この原始人。スマートホンが武器だと思ってるぞ!」


 生中継されているとは思っていなかった。

 彼らは異世界人を完全にバカにしていたのだ。

 フィーナたちは弓を構えたが道彦に銃が向けられ手を離した。

 道彦を撃った男がベルトを外しズボンを下げた。

 固くなった醜悪なものが自己主張していた。


「どの娘にしようかな? それとも男を犯すかな?」


 男はイチモツをぶらぶらとさせながら妄想に耽った。

 その妄想は現実になるはずだった。

 男は下卑た笑いを浮かべながら暴行を加えようと道彦に近寄った。

 今だ。

 道彦は尻の下に敷いた拳銃を取り出す。

 少ない知識から安全装置を外し銃を撃った。

 男のイチモツが破裂した。


「あ?」


 男が間抜けな声を出した。

 道彦はさらに引き金を引いた。

 一発が頭に当り男が崩れ落ちた。

 道彦はさらに他の男へめちゃくちゃに銃を乱射した。

 マガジンが空になると銃を捨ててナイフを抜いた。

 圧倒的戦力に過信をしていた兵士たちは突然のイレギュラーに動作が遅れた。

 片腕をだらんと下ろしたまま道彦は男に襲いかかりナイフで刺した。

 男は抵抗しようと手で道彦を突き飛ばそうとした。

 道彦はその手を斬りつける。

 すぱっと手の平が切れ鮮血が飛んだ。

 道彦は攻撃本能の赴くまま斬りつけた。

 ナイフは兵士の顔をなで切りにする。

 道彦はさらにナイフで突き刺した。

 ナイフは角度をつけて頬へ刺さり兵士のアゴの骨に当たった。

 兵士が蹴飛ばしてくる。

 道彦はそれをまともに受けるが、すでに体勢の崩れた兵士が逆に後方へバランスを崩した。

 道彦はナイフを腰だめにして突進する。

 兵士の腹にナイフが突き刺さる。

 根元まで深々と刺さると血で手が滑った。

 二人はそのまま地面に倒れた。

 道彦は慌てて地面を手で探るとこぶし大の石が落ちていた。

 道彦は石をつかみ兵士の体を殴った。

 兵士の抵抗が弱まると顔に向かって石を振り下ろす。

 歯が飛んだ。

 道彦の手に痛みが走った。

 歯が刺さっていた。

 それでも道彦は止めなかった何度も石を顔に振り下ろす。

 べちゃっという湿った音が響いた。


 道彦が兵士を殴り続ける中、アリアとフィーナは弓を射った。

 その正確無比な弓によって急所を撃ち抜かれた兵士が二人倒れた。


 兵士の顔面がへこんだのを見て道彦はゆらりと立ち上がった。

 まだ撃たれた方の手は動かない。

 だが凄まじいまでの迫力があった。


 最後の兵は慌てて銃を撃とうとする。

 ここで道彦たちは死ぬはずだった。

 どんなに有利でも21世紀の複合小銃に勝てるわけがないのだ。

 K11複合小銃。

 グレネードとライフルを組み合わせた銃である。

 兵士は焦っていた。

 まさか反撃してくるとは思っていなかったのだ。

 こんなはずではなかった。

 男はなぶり殺しにして、女はさんざん犯してから殺すつもりだった。

 そして祖国で薄汚いチョッパリを殺した英雄として表彰され、ベトナム人かフィリピン人の嫁を金で買って妻を殴りながら悠々自適に暮らすつもりだった。

 全ては完璧だった。

 それなのに!


 男は悪魔に出会ってしまった。

 それは少年の姿をしているが悪魔そのものだった。

 残酷で理不尽で人の命をなんとも思っていない悪魔なのだ。

 恐怖に駆られた男はボルトアクション式のグレネードを発射しようとした。

 己の持っている最大の火力で道彦を葬ろうとしたのだ。

 男が引き金を引いた瞬間、男の銃が爆発した。


 そう。

 それがK11複合小銃の不具合だった。

 K11の不良率は約半分。

 一説によると66%にも及ぶ。

 その不具合で有名なものとしてグレネードの暴発がある。

 それが起こったのだ。

 今回は運がよかった。

 道彦は思った。

 それは韓国軍の兵器までもが道彦を応援したかのようだった。


 男は吹き飛び地面に倒れた。

 腕はちぎれてどこかに飛んでいた。


「た、助けて! こ、これは命令されてしかたなく!」


 男はちぎれた腕を振り回して言い訳をはじめた。

 男に道彦がゆらりゆらりと近づく。

 その手には別の兵士から奪った拳銃が握られていた。


「なに言ってるかわかんねえよ」


 道彦は男に馬乗りになると男に向かって引き金を引いた。

 何度も何度も。

 道彦は敵兵を一撃で殺す方法など知らない。

 拳銃の射撃は男を最大限苦しめることになった。

 悲鳴と命乞いがあたりに響き、それは全てリアルタイムで世界に配信された。

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