人生転機のサルベージ事案
この事案も農家の次男坊が投資詐欺にあった事から始まる。千葉県・本八幡K藤家は代々続く名家で本宅はJR本八幡駅近くにあった。既に農家は廃業し同地区に点在する・所有する駐車場や家作の収入で、老夫婦がひっそりと暮らしていた。長男、次男ともに成人し別世帯を設けていた。次男のMは荒川区の町屋でタイルの加工業を営んでいたが、ボンボン育ちで警戒心は薄かった。知人仲間の飲み食いから始まって、女遊びや海外旅行の接待を受け、お決まりの出資話を持ち掛けられて、親父名義の駐車場を担保に、新宿の悪名高い街金・T山物産から物上保証で8億を借入れていた。主債務者のX社は計画倒産、社長は行方不明で、連帯保証人に成っていたMに返済を迫っていた。典型的な詐欺師と街金の出来レースである。返済期日も迫っていたので早々に現地調査に行った。この時同行した部下が、K鉄商事から転職してきたM野であった。物件はJR本八幡駅から徒歩7分道路付きも北6m、西6mの整形地の600坪の駐車場、マンション用地としては好立地で評価額は15億と試算した。部下のM野は「商品化できれば儲かりますね?」と、サルベージしても返済財源は物件売却しかない。M野はデベロッパーのK鉄商事出身、業界にも仲間多いことから、返済時期を合わせて売却先のマンションデベロッパーを探し始めた。地主も我々もウイン・ウインに成る救済計画を練り上げた。K藤一家は同街金より弁済を強硬に迫られていて、信用できる金融機関に一日でも早く肩代わりする事を希望していた。J流通社の融資で街金関連や筋者を一掃し、優良な会社に適正価格で売却、その後譲渡益による稼働資産物件の斡旋や税務対策までの計画を入念に説明・説得した。一連の業務委託を当方(小生とM野)の関連会社と締結した。売却計画も周到に準備、一級建築士にキャドを引かせ、仮分譲プランの事業計画書も添付して、大手を含め数社のマンションデベロッパーに持ち込んだ。その中で、香川県の中堅デベロッパー・A吹工務店が言い値で即決、一番に手を挙げた。同社は山陽、四国ではそこそこ名を売ってる分譲会社であったが、東京進出したばかりで、関東でも実績はゼロであった。東京支店のスタッフも支店長W田氏と一級土木士・部長の7T多氏そして仕入担当でM野の先輩・N野課長の3名だけであった。下話で物件の詳細、経緯はM野とN野間では了承され、裏付けの添付資料も旧知の信頼筋が作成した物で信頼性は高かった為、観ず点で買付けの運びとなった。
直ちに責任者同士の実質協議に入った。先方はW田支店長以下3名と当方は小生とM野の2名による合議で、売却条件は単純明瞭、坪単価250万・確定実測精算・更地渡しである。K藤一族郎党も好条件に快諾、既に譲渡益7億円長者を思い浮かべていた。隣地所有者の境界確認書も3か月で取得できた。昔は、この手の話に、難癖付けて介入いてくる政治ゴロや右翼が多かった。この件でも小生が首謀者と嗅ぎ付け、直に電話で恫喝してくる愚かな三下奴がいたが、そこ頃、小生は既に、政治案件やその筋の案件を多く熟していて、業界では有名な熱海のI川会・本家筋の企業舎弟の一員と目されていた。不良同士ぼ諍いは、組織や地位・格で決着がつく、本性を告げると早々に退散の態であった。計画は順調に推移し、半年後、最終決済を本八幡のF銀行で行う運びとなった。ただし、関係各位のB勘定謝礼や設計料、と名目上の仲介会社(事後、計画倒産)の買収資金と手数料の1/3が諸々の経費で消えてしまったが、15億の両手の手数料は初めて稼いだ大金であった。これを機に、K藤家とは以後20年の付き合いになり、代替資産の買替えで千葉市。都賀のアパート1棟の仲介や自宅敷地のマンション建替えも手掛けさせてもらった。ただ次男Mは10年後に、また同様の詐欺事件に遭い、自己破産する事になった。