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海
15.3.8 推敲(7連目最後)
磯の黒い石の間を
白い泡を残して
波は寄せてひいていく
薄い雲は空を覆い
透かして あるいは
切れ間から漏れ射す光
水平線は
雲と水の間に横たわり
細い腕を伸ばして
月を掴む
己自身の血に塗れ
満月は狂気の静けさを
海原と大地の間に
敷きつめている
(只々繰り返している
誰も見ていなくとも)
海鳥は黒く飛ぶ
止まり木すらないこの海を
ひたむきな眼差しで
遠い明日を見つめている
崖の上に生える若草は
海からの風に嘆くこともなく
揺すられるままに
雨と陽を待っている




