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猫たち
柔らかくしなやか
滑らかで艶やかで
気まぐれであたたかで
どこかどうしても哀しい
喉を鳴らしてすり寄り
または
爪を立てて膝へ上り
尻尾を真っ直ぐに立てて歩き
振り返り鳴く
お前たちはどうして
そんなにありのままでいて
その哀しみを受け入れているのか
美しい毛並と
軽やかな足並みに
無表情な喜びがある
月の下で恋に鳴き
座敷でだらしなく眠る
屋外では戦士となって
傷を負って帰りつく
姿を消してしまうものもあり
戻らぬものもあり
戻るものもあり
お前たちはどうして
そんなにそのままでいられるのか
わたしも もっと
静かな旋律に染まり
神々の地を感じて
深く深く精神を潜れば
辿り着けるのだろうか
それとも
彼らと同じく 塀の上を歩き
地面を転がり 無駄事を言わず
エサだけを喰い 水だけを飲めば
近づけるのだろうか
結局 不要なものが多すぎて
一番大事なことが分からないのだ
生きることにとって 無駄な言葉は数多く
無駄な心配も多いのだろう
ただひたすらに
今日を思い 食べることを思い
自分を大切にして 必要最小限の仲間だけを守り
楽しみを恥ずかしがらずに楽しむ
それでいいのだと
彼らを見ていると思う




