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舞子
舞子が路地を遠ざかる
片側はトタンが好い具合に錆びていて
もう片側は土壁が美しく整えられていて
狭い空の下を
黒い影が小さくなっていく
京に暮れていく空には
華やかさが残っている
むしろはんなりと輝きは強まって
存在をぼんやりと主張している
我が方は滅びてしまったか
猫だけが元気な古びた街となって
かつていた舞子はいなくなったか
新しい思い出を創ろうとしている
それはそれでいいのだけれど
断絶の崖を越えられなければ
単なる新しがりになってしまうのに
埋め火を起こしている
失われた千年を取り戻すための千年
時を取り戻すのに
急いではいけない




