涯の都
遠くて近い哀しみの木かげ
せせらぎが流れる冷たさ
突き抜けていく寒さという旋律
小道は凍るように冷たく
つま先まで沁みる貧しさ
指先はかじかんで赤く
澄み渡る空を飛ぶカラスは一声も鳴かない
何もない明日と
何も持たない今日と
何も残せなかった昨日に
美しい音楽が今聞こえているのだ
旋律は華やかにあるいは激しく流れ
リズムは時に止まり急に始まる
一面に広がる鮮明なリアル
細部まで完璧な世界に触れれば
そこには我が身まで呑みこむ深淵がある
彩りはあるいは埋められあるいは花咲き
薫りはあるいは留まりあるいは辺りを覆う
この完全なる芸術に満ちた世界のなかで
わたしたちはさまよう
行く末に迷い
なすすべを手からこぼし
導きの星は雲に隠れてしまった
透明な影を追い
面影の囁きを聴き
記憶の香を嗅げば
自ずから往きつく彼方への入り口
永遠と空白の住む都への道
皆が夢見て
天才たちが幾人か行き着いた場所
天空に通じる橋
水晶の宮殿へと続く道
完全と完全に形作られた
叡智と情熱の世界
果てしない希望の
行き着く涯
断崖を超えた
磨崖仏の微笑む先
茫洋とした砂煙の晴れた後に現れる
緑豊かな楽園
哀しみの涯に
あきらめの涯に
追憶の涯に
胸の奥で結ばれる像たちが
その宮殿で憩う
涯の都
終焉を待ちわびる地で
かれらがわたしたちを
待っているのだ