逆らえないこと
きこえますか
湿り気を帯びた刺さない風に
まだ穏やかではないけれど
確かに昨日と違う華やかさ
みえていますか
陰鬱な雲の下
無骨な裸の樹の梢に灯る
春の灯
かおりますか
雨に沁みた地面から立ち上る
喜びに満ちた体温に温められて
卵たちをくすぐっている土の薫り
やってきたのです
季節はニンゲンの混乱をよそに
確かに酷薄の季節を過ぎたのです
招待状は津々浦々に満ちて
目覚めのワルツの演奏会が
足もとの小さな雑草の声から始まり
やがては山々を震わせ海を轟かせる
絶望は同時に降り注ぎ
乖離の寂しさと痛哭は
与えられない人々を刺していく
残酷な物語がまた始まる
取り残される哀しみの低い響きに
枯れた涙をまた思い出す
消えてしまった
失ってしまったことごとが
欠損した肢体の先のごとく疼くのです
それでもそれでも
身体の奥では春を喜んでいることに
許せなく思いながらも
季節と言うものを
受け入れざるを得ないのです
これが生きているという事です
生かされているという事です
自律的でありながら受動的であり
自発でありながら他発であるのです
雨が降れば濡れるほかなく
腹が減れば食べるほかなく
一人になれば寂しがるほかなく
どうしたって逆らえないことなのです
大きな命の中で
ぽつんと
取り囲まれているのです




