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片目の子犬
夕雲が入日に焙られて
ゆっくりとその形を変えながら
昇っていく
哀しさは闇をまち
もしも雲の中にあれば
あたりは冷たく暗く
それでいて軽々と泳ぐように
山野は雪に覆われ
斜面は
美しい白い骨と髪の毛の靡くよう
竹林は
白と濃緑の千鳥模様で
どちらが哀しいのか
どちらが愚かだとか
踏み混じった足跡のよう
ここまで哀しいのに
切なさの色が満ちているのに
幽玄の景色では
それすら美しい
影は長く曳き
その罪の長さのように
次第に黒くなるのは
重ねる嘘の重さのように
それでも
この県境をこえれば
明日になる
そこに
あるのか 待つのか と
片目の子犬が
繋がれて
微かに尻尾を振りながら
いつ来るか知れず
迎えを待っている




