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年老いた詩人
消えていく気配の余韻はもやもやと残る
どうしてそんなこと ひと時過ぎた後に
消えない懐疑が 立ち昇る
赤いズボンが落ちていた 人形の物だろう
振り切れない温もりの気配が 呼ぶ
美しく化粧をしている ひとに出会い
報われない愚かな劣情が 尾を引く
何処にも言葉はなかったけれど
わたしのなかに生まれていた言葉
勝手な意味を問う言葉は
わたしに見えている世界に
狭い枠をはめて
分かった様な気にさせてしまう
年老いた詩人は
何度も意味を重ねられた言葉に
水をやり 芽吹かせて その実を収穫する
実には少しの毒があるが
よく陽に干せば消えてしまうから
お一つ如何ですかと
皺だらけの顔で笑う




