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【詩集】果てしない扉  作者: につき
重なる透明の色
7/100

あえたらいいな

ベッドをでて

部屋を出て

こっそりと玄関を出て

足音をころして庭を出て

道ばたのいしころをよけて

みなみへあるこう


カーブミラーに映らないように

近所の人にみつからないように


イヤホンからながれるテクノもどき

スマホから再生されているクラシック


こころの穏やかになればなるほど

目線はさまよい足取りはふらつく


晴れているのか曇っているのか

雨をぽつりと感じたら

冷たい涙みたいだと思う


いまごろまだあの川の中で

小さな鮫は待っているだろうか


なんどかのぞいてみたものの

姿はなかったから


静かに一人泳いでいって

今ごろ冬の海にいるのだろうか


凍えながら海辺を散歩する

女子高生の詩人が

小さな鮫をみつけたら


砂浜にしゃがみこんで

鮫の小さい黒い目を見つめながら

とっても残酷な言葉を吐きつける


おまえは鮫なんかじゃないんだよ

おまえは暑い国の王様の末っ子なんだよ

今から遠く遠く海を泳いでその国へ行き

子どもだけれど年老いた魔法使いに

魔法を解いてもらいなさい


小さな鮫は驚いて

びしゃっとはねてひと潜り


小さな鮫には分からないから

また川をさかのぼってきて

わたしの顔を見に来るだろう


今からわたしは川へ行くけれど

うまくあえるといいけれど


あの日わたしが置いてきた

小さな鮫にあえるといいけれど


そうしてうまく

説明してやれればいいけれど


おまえはおまえでしかないと

どうしようもないおまえでしかないことを


おまえはむねのなかには

大きく無限にはじけるおまえを持っていることを


おまえのからだの中には

白く輝くつばさが眠っていることを


おまえは時間も空間も命さえも飛び越えて

そのつばさでどこまでも飛んで行けることを


虚空の宇宙を光を連れて飛び回り

深海の暗黒へマッコウクジラと共に潜り

幽玄の境を薄らと輝く亡霊の群れに交じり超えていく


放たれた者にのみ叶う真実を

潰れた胸の下でのみ羽ばたける呻きの空を

爛れたこころだけが掴む先の夢を


止まらない連鎖の悪意からも

泥だらけの善意を晒す吹雪からも

血塗れの眼で見る喪われた未来からも


目をそらさずに

あまりに小さい鮫がいる


置き去りにされたままで

少し震えて腹を減らして


まっている

あまりに小さい鮫にあえたらいいな




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