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拾いなおすこころ
わたしはだめなやつだ
こんなに暗いことばかり考える
居なくなってしまいたい
と 紙に書いて くしゃくしゃに丸めて
ごみばこに捨てたけれど
すぐに拾いなおして 広げて しわを伸ばして
その辺りに仕舞い込んでしまった
とても捨てられはしなかった
ネガティブであっても
絶望的な思いであっても
胸の中に石のように持っておく
それが忘れないでいるということだろう
大切な一瞬に固定されたままのこころを
ぐるぐる回してやると
綺麗な円を描いて きよきよきよと鳴く
その声は呼ぶ
遠い遠い曇り空の 北風のふいている
枯れ野原の 向こうがわ
川の無い広い都の跡で
転んだわたしの嘘泣きの耳を
逃げられない郷愁の地の
埋められた井戸の中
暗く滴る誰にも見られない雫を




