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わたしの好きな猫
沁みてくる詩など待ってはいけない
もっと前向きな言葉を持つべきだ
そうはいいつつ
胸の奥の泡が潰れてしまったときなど
抑えきれない感情にもならない思いは
そんな詩を恋しがってしまう
猫に詩はいらないだろう
犬は待っているかも知れない
小鳥は詩そのものだし
蛇など冬眠してしまっている
それでもわたしを見る猫の目は
冷酷無情でありながらどこか温かく
のどをごーごー鳴らしながら迫って来る
彼女は詩を解さないが詩を纏っている
あの柔毛の手触りは詩情がある
丸みを帯びながら鋭角的で力強く俊敏な動きは
手の届く野生の趣となっている
哀れでないでない猫がいい
馬鹿みたいに夜に暴れて
盛りに鳴き 爪をといで
ばりばりとエサばかり食べる
そんな詩情のかけらもない猫が好きだ




