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破滅の季節
特にはっきりと陽が射して
わたしの形を思いがけないくらいに
鮮やかに描いてしまった
たじろぎながらも
一つだけの影を
しかたないものとして
奇数型のわたしは
割り切れないことを認めるしかなくて
孤独な前傾姿勢のまま
白い石の上に
叩きつけられていた影を
石と土の間のがくと折れた
わたしそのものよりも力強くみえる影を
やがて日が陰り大きな雲の影に
混ざって融け合ってしまうのを
ほっとしながら残念な思いも誤魔化せず
見た
おさない子どもが
走り回り
可愛らしい声で
ゆきと言ったから
風花が舞って
壊れたとゆを揺らして
どうしてだか幻想的な
洗濯物がたくさん干されていて
地面は冷たく濡れていて
山茶花の花びらが散り零れていて
往生際の悪い紫陽花の葉が
色を失った黄色で水溜りに浸っていて
この庭の全ては
また来てしまうあの季節まで
静かにしている気でいる
わたしだけが抵抗してみても
こころの一点だけが動かずにいても
抑えきれないひたひたとした足音が
それ程遠くないところまで迫っているから
やがてこの強制的な季節の移り変わりが施行され
わたしの中の破滅者を苦しめる春が来るのだ




