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【詩集】果てしない扉  作者: につき
琥珀の横顔
56/100

破滅の季節

特にはっきりと陽が射して

わたしの形を思いがけないくらいに

鮮やかに描いてしまった


たじろぎながらも

一つだけの影を

しかたないものとして


奇数型のわたしは

割り切れないことを認めるしかなくて


孤独な前傾姿勢のまま

白い石の上に

叩きつけられていた影を


石と土の間のがくと折れた

わたしそのものよりも力強くみえる影を


やがて日が陰り大きな雲の影に

混ざって融け合ってしまうのを

ほっとしながら残念な思いも誤魔化せず

見た



おさない子どもが

走り回り

可愛らしい声で

ゆきと言ったから


風花が舞って

壊れたとゆを揺らして

どうしてだか幻想的な

洗濯物がたくさん干されていて


地面は冷たく濡れていて

山茶花の花びらが散り零れていて

往生際の悪い紫陽花の葉が

色を失った黄色で水溜りに浸っていて


この庭の全ては

また来てしまうあの季節まで

静かにしている気でいる


わたしだけが抵抗してみても

こころの一点だけが動かずにいても

抑えきれないひたひたとした足音が

それ程遠くないところまで迫っているから


やがてこの強制的な季節の移り変わりが施行され

わたしの中の破滅者を苦しめる春が来るのだ

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