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【詩集】果てしない扉  作者: につき
琥珀の横顔
54/100

片隅で蹲る事実

そいつは闇の隅に

顔の無い黒い姿で蹲っている


目の隅に見るともなく見えてしまう

そいつは

まるで後悔しているふりをしているようで

一言かけられるのを待ってるふうでもあり

それでもいじけてこちらを見ない


わたしはそいつに対して

やり場のない怒りを何度もぶつけてきたし

殺してやろうかとも何度も思いもした

火のつくほどに睨み付けてやりもしたし

こころのなかでどろどろと恨みもした


それでも

決着のつかないままに

歳月は経ち

新たな命が生まれ

大切な人が亡くなり


落ち着きそうになっていることを

そいつは横目で見て

嗤っているのだろうか


わたしの甘さを嗤い

弱さを見下して

そいつは暗い隅で

少し姿勢を緩めただろうか


許せはしない

認めることも出来ない

そんなことを引き受ける故もないのに


事実だけが進み

わたしをその渦中に押しやるのだ


この全体を爆破するような突破力が欲しい

わたしそのものもばらばらにしてしまう

無暗やたらな馬鹿馬鹿しいほどの暴力で

この事実を破壊してしまいたい


しかし

片隅で蹲る事実は

そんなわたしをまた横目で見て

そんなことはできないだろうと

口の片方を歪めて嗤っているのだ


そうやって

また今夜も

許せない事実を片隅に置いて

知っていながら諦めたように

同じ部屋で眠るのだ


わたしの後悔の服を着て

追憶を齧るそいつは

どうにも収まらない胸のつかえを引き起こし

夢の中まで浸食してくる


恐ろしい破滅の夢

寒々とした一本道の夢

届かないことを知らされる夢


悪夢と許せない事実と

現実と果たせない自分と


結局はそういう事なのかも知れない

待っているのは私の方なのかも知れない

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