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母を刺す
言葉の包丁でわたしは
母を刺した
どこまで深く刺さったのだろうか
腹を突き抜けたのか
身体の中で刃は折れたのか
復讐は思いがけないやり方で
わたしを殺した
もろとも死ねば幸せだったと
川岸のブロックの汚れのように
沁みついて哀しく苔が生えている
なぜあのときなぜあのとき
どうしようもなかった
いっその事居なくなってしまいたいと
叶えなかった崖っぷちの希望のわたしが
今家族を路頭に迷わそうとしている
手に持った包丁で母は
わたしを刺そうとして
追いかけられるままに留まれば
もろともに刺し殺していたのだろうか
あの暗く冷たい板の間の台所で
夢と命は失われ
暮らしと続けることが優先された
全てに火を放ち煙の中で
黒こげになってしまえば
夢は報われただろう?




