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優しく騙す声
見失ったそれを取り戻すため
かき集めたありふれていたことは
色とりどりの落ち葉のように
ところどころ穴が開いていても
思いがけないほどに鮮やかに発色していた
欠けてしまったそれを埋めるため
拾い集めた遠ざかることは
池の面の薄い氷のように
どんぐりや落ち葉を留めて
柔らかい後ずさりの声がまだ聞こえていた
紙芝居の中にしかいないそれを見つけるため
追いかけていたころのわたしの足は
どんなに立ち尽くしても疲れないほどに
樫の木の棒のように強くなっていて
我知らず声も大きく自信に満ちていた
止まらない挨拶の夕暮を見送るため
俯くことしかできないわたしの耳は
囁きばかり聞きたかったのに
街の声は怒鳴り散らしていて
優しい耳触りのいい声は騙す声ばかり