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「不安な午後に雨が降る」「散髪屋との攻防」
「不安な午後に雨が降る」
傾いた太陽を透かして
雨が降っている
沈黙の窓で子どもが見ている
剥ぎ取られた母性は立ち尽くすばかり
掴めなかった父性は薄っぺらい背中
黒い犬は黙ってうずくまったままで
上目づかいで見上げている
尽きない雨 雨 雨
全ての雫に感情はないのに地面で弾けて飛び散る
もしつかの間晴れて
雲の切れ間から光が差しても
そんなことに意味はない
また降り出す雨 雨 雨
冷たい雨が降り続く
「散髪屋との攻防」
髪を切っておこうと思って
散髪屋へ行って
「どうしますか」
もしもお任せにすればどうなるかわからない
でもどうすればいいかわからない
「これでよろしいですか」
いいかどうかはわからないけれど
よさそうな顔をして頷いている
「シャンプーをどうぞ」
断ったはずなので再度断り
家へ帰って既に風呂に入っていたことに気付く
結局二度風呂へ入ってしまった
これは敗北なのかも知れないが
再戦は数か月後になるだろう