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こぼれてしまう音
演奏者が演奏するとき
聞き手によって
その手は軽くなるように
詩を書くものは
読み手を想像しない
誰かというわけでない誰かへと
わたしというわけでないわたしへと
届けようとしているのか
それともただ
広がっていく言葉たちの雰囲気を
書き残しているだけなのか
わたしたちに楽器はないから
すべて言葉にするほかはなく
どんなに小さな音も聞き漏らさないように
こころを小さく留めている
それでもこぼれてしまう音にこそ
霊が宿ると
わたしのなかで着想がいう
見過ごしてしまった
小さな花の色の
尊い輝きに
見失ってしまった
遠いあの日のおもちゃの
大切な温かみに
それが宿っているという
わたしたちは
見過ごし
見失い続けているから
そこに
詩が生まれるのだろう