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別れ
別れが美しい旋律で現わされるまでに
強すぎる痛みが傷跡を残し
開いたままで閉じない扉からは数限りない涙が零れている
晩秋のような哀しみと
真冬のような凍えは
突き抜けてしまった薄青さと
小さな銀の鈴の音のような
放り出された軽やかさを伴って
胸に沁みついてしまう
それからのあしたは
風の音に痛み
雨の匂いに感じ
陽の眩しさに泣いてしまうことを
超えて
美しさとは完全でないことを知る
壊れた場所からこぼれてくる光に
きらきらと光る埃のような
冷たい青緑の淵に棲む
岩魚の赤い斑点のような
動いていて
まだ生きている
美しさの中に
残酷な事実がある
美はうつろうけれども
消えはしないということ
いつも人は
美を速やかに認識するということ
そして
哀しみが美しいということ




