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団らんの朝
見た目は同じでも
意味が違うのです
嬉しさが極まって
感動に胸を震わせて
笑い転げまわり
流す涙には
色んな意味があるはずなのに
私が詳しい涙の意味は
哀しい涙のことばかり
だからそのこと少しだけ
哀しい涙の二つきり
一つ
軽いためらい涙
ためらい傷の頼りなさ
流れた頬の冷たい感じ
洗われて少し軽くなって
二つ
重い致命傷
止まらない痛み
零れているのは
透明な血
どくどく流れる
わたしの命です
でも
そろそろ
哀しい傷を忘れましょう
白い障子を透かす陽は
柔らかに廊下を照らしている
硝子ごしの夕暮は
埃まで赤く染めていく
眠る私には
届かないけれど
朝の光はやってきている
日常の朝に響く
透き通った朝の声たち
子どもたちが騒いでいる
学校へ行こうとしている
おさな子が
どたどたと走り回っている
猫たちが
たたたたと走っていく
家族たちの団らんが
朝の団らんが
聞こえてくる
私の一番大切な願いが
聞こえてくる
この
団らんの朝に
この
大切な朝に
この
彷徨わない朝に
こそ
わたしの命が
漲っています