子キツネの夢
夢を語れ
醒めない夢を語れ
眠りの深い子どもらよ
昼眠たげな猫たちよ
戸惑う森のナマケモノよ
弾けた泡の輝きよ
朽ち木の震える瞬きよ
輝くトタンの冬の陽よ
届かない思いを語れ
諦めた未来を語れ
この胸のつかえを語れ
泣かれる海の塩辛さを語れ
吹き荒れる雪嵐の中で
わめき散らす沈黙の山で
最北のかまどの炎は爆ぜる
遠い面影を焼く
止まらない夢の列車よ
この胸を打つ機関の響きよ
夢は止まらない
誰しもの願いのように
暗闇で乞い願う明かりのように
膨れ上がる夢を吐き出せ
吐き出した大きな雲は
澄み渡る空を往く
雲の艦隊は
整然と進み
やがて
果ての荒野に影を落とす
荒野に震える
小さなキツネは
その影を見て
また震えた
なんて果てしなき欲望だろう
なんて大きな絶望だろう
小さな体に抱えきれない
膨れ上がるこころ
そして
暖かな日差しが
キツネを照らしたら
巣穴で眠る子キツネは
大空を往く夢を見る
先の先のあしたの先の
遠い遠い思い出の場所へ
夢は子キツネを連れていく
夢の中では
断ち切られたつながりは結び
焼かれた面影が微笑んでいる
とりとめのなさに救われた
哀しみと語れない言葉に
語られるのは夢
茫洋とした夢
燦然とした夢の
開いた扉
はじまりでなく、連続した断絶の一部として始めます。