表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠の旅路  作者: 朔良
最後の場所
22/24

過去 2

 

 メイファは自分の能力に見合うだけの地位と権力、そしてジュンを手に入れるつもりだったのだ。

 もしかしたら、五年前のあの時、死にかけたパパを炎から救ったのもメイファだったのかもしれない。

 そう考えると、あんなに都合よくパパが登場した理由もわかる。

 ルキーノを失ったパパが頼ろうとした“あの女”は、メイファというわけだ。

 

「……想像でしかないけどね」

 

 一気に話し終え息をつく。

 フェイは無言で立ち上がると、土瓶を火から下ろし、漉してからカップに注いで差し出した。

 

「よく冷ましてから飲んでください。本当は自然に温度が下がるまで待ったほうがいいのですが…」

「ありがと」

 

 丁寧に吹き冷まし、あたしは恐る恐る漢方薬に口を付けた。

 ふぅん。思っていたより飲みやすい。

 クセのない優しい味だ。

 あたしがお茶を飲むのを黙ったまま見ていたフェイは、穏やかに、

 

「……メイファは、欲望に正直で野望に忠実です。目的を果たすためなら手段を選ばないでしょうね」

 

 暗の肯定。

 

「私の若いころに似ている。血は争えないということでしょう」

「メイファは、フェイさんの子どもなの?」

「いえ。孫娘ですよ。あまり似ていませんが」

 

 孫娘? じゃあこの、ジュンやメイファと変わらぬ歳に見える男は、いったい幾つなのだろう。

 妖怪か仙人ね。

 そう呼ばれている理由がようやくが分かった。

 

 って!!

 そんな太平楽なこと考えてる場合じゃない。

 メイファのお祖父さんってことは…。

 あたしの緊張を読み取ったのか、フェイは、あたしに向けて優しく微笑んだ。

 

「心配いりませんよ。血族より自分の欲望を優先させるのが、私たちの一族です。メイファは今回、あなたの父親の記憶障害をタイミングよく解くために、私を利用しました。ルキーノに囚われた件にも、恐らくメイファが関わっていたのでしょう。

だが、私はそれを恨まない。一族にとっては自然なあり方なのでね。そして、私も、メイファの都合より、自分のしたいことを大切にします。私にとっては、ヤブキもあなたも大切なゲストですよ」

 

 あたしの知らないジュンをたくさん知ってる人。

 

「あのさ、フェイさんはRプランやイレイザープロジャクトのことを知ってる?」

「概要だけならば。現役を退いて永いので詳しいことはわかりません」

「……ジュンは、どう関わってるの?」

 

 ジュンの役割。

 ママやパパとの関係。

 そして、そこでなにが起こったのか。

 記憶が戻っても、結局それは判然としない。

 

「行為と結果だけでは、あなた知りたいことはわからないでしょう。そこに含まれる意味や真実は当事者しか知らない。……いえ、本当は当事者にすらわからないものなのかもしれませんが。でも、ヤブキから直接聞いた方がいいと思いますよ」

 

 ジュンの口から、直接。

 

「……ヤブキに、会いますか?」

「会えるの?」

「あなたが庇ったおかげで、怪我はかすり傷くらいです。あなたの容体を案じてまんじりともせずにいますよ。……どうしますか」

「今はまだ。……ううん。……やっぱり、会いたい」

「わかりました、少しお待ちなさい」

 

 あたしの言葉を受けて席を立つフェイの後ろ姿を、あたしは右手を爪が肉に食い込むほど握りしめて見送った。

 

 会いたい。

 でも、怖い。

 まったく気持ちの整理が付いてないし、会っても、どうすればいいのかわからない。

 本当なら真っ先に確かめたいはずのジュンの安否を後回しにして、メイファの話なんかはじめたのは、会うのが怖かったからだ。

 

 だって、ジュンと顔を会わせてしまったら、きっと…。

 

 あたしは苦しい思いを抱えたまま、ジュンが現れるのを待った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ