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俺の学園生活は何かが間違っている  作者: いんぱらす
始まりは残念系・・・
9/21

心結の想い

 翌日、今日こそ真相を知るべき時だ。

俺は少し心の準備をして、落ち着いた状態をキープしながら真面目な表情で授業道具を調べる。

「とうぁ!」「はうっ!」だが直後にポーカーフェイスが痛みに歪む貧相な顔となる。

「ば・・バカ野郎っ!いきなり蹴りつけるアホがどこにいるっ?」「ここ」「・・・」素で返されちゃったよ。

愛華はいつもと同じく俺に暴力を振るってきた、それも一方的に。

「兄ちゃんがポーカーフェイスとか似合わない、てかそれ以前に生理的に無理」「そこまでっ!?」愛華にこう言われては御終いだ、もう嫌だ。

「はぁ・・そうっすか」「どうしたの?急にしおれちゃって、慰めてほしい?」どこまでもS気全開な愛華に少々引きつつ俺は宣言した。

「お前、俺イジって楽しい?好きなの?」と意地悪気味に。

すると 「は・・え・・あ・・!そ・・そんなわけないじゃん!えーっと・・その・・あ!暇っ!暇なの!暇つぶし程度に相手してるのよ!あ・・ありがたく思ってよね」とすっごく噛み噛みに返事してくれた。

「へー・・・」ジトーっと眺めると、「うっ」と軽く呻く愛華、あー・・たまにはイジる側もいいもんだな。

「あ・・う・・・く・・喰らえっ!」「げはっ!」とうとう我慢できなくなったのか愛華がラリアットをかましてきた、躱してもよかったが、躱したらもっとひどくなって返ってきそうなので喰らっておく。

「兄ちゃんのバカっ!さっさと学校いっちゃえ!」「へーいへい」俺は愛華の指示通り学校へと向かった。


 その時心結はとても困っていた。

「・・・どうしよぉ」悩んでいる内容はただ一つ、悪戯気味に秋良にキスをしてしまった事についてだ。

「あぁ・・・学校で質問攻めに遭うよ・・・」そんな秋良に向かって「悪戯でした、テヘッ」じゃ済まされないだろう、実際心結自身も悪戯でやったわけじゃない、理由があってのことだ。

「けど・・・自分勝手だから、ダメだよね」今更ながらに自分の行動に怒り心頭な心結。

「・・あー・・どうしよぉ」結局悩む事しかできていないのだった。


 「さーってと」俺は愛華を久々にイジって楽しみ、家から出発した。

母さんは今日も朝早く出て行ってしまった為、今現在家にいるのは愛華一人。

「ま、大丈夫でしょ」愛華はしっかり者だから、おっちょこちょいな行動は起こさないだろうし。

ちなみに愛華は、開港記念日とかいう奴で、中学校自体が休みなのだ。

「休みに朝早く起きるとか、真面目すぎるな」少し引きつつ俺は学校を目指した。


 「おーい秋良ぁ」「んあ?」背後からタッタッタと走ってくるのは大樹だ。

「貸し借りなしな」「知ってるよ」花火大会当日の事件の活躍者である大樹は、昔俺にとある貸しがあったのだが、それも根に持っていたらしく 律儀に今回返してくれた。

「さて、俺も今ハッピーイベントを全力で捜査中だから楽しみに待っててくれい!」「やっぱ貸しありで」訂正、返してくれた直後にまた貸しを作るコイツは返しても意味がない。

「にしてもよ?今日朝心結から電話きてさ」「心結から?」俺達は校門をくぐり、玄関へ向かう。

「ああ、何か知んねぇけど休むみたいだぜ?」「まじかよ」あの元気が取り柄な心結が休むなんて、こりゃ本当に本当なパターンかもしれないな。

「適当に言い訳しといてだってよ」「へぇ・・」少し焦りつつ俺は上履きに履き替えて俺達のクラスへ。

「あ、秋良」「?」俺が教室へ入ると、扉前の女子がワっと立ち退く あれデジャブ。

けどその女子の動きとは真逆に近寄ってくる女子がいる、柏木麗香だ。

麗香とは昔からの付き合いだった(今まで忘れていた)のを思い出した為、お互い名前で呼び合う仲にまで戻った。

「麗香、どうした?」「え・・あ、今日は遅いから休みかなって」麗香は言葉を濁しながらチラチラとこちらを見上げている。

「・・・それだけか?」「え・・・あ・・その・・」今度は確実に噛み噛みになる麗香、ヤンキーの推理力をなめちゃいけない、何故俺が襲われるのか、その経緯を辿って対処することもまたヤンキーの実力なのだ って何で似非ヤンキーがリアルヤンキー語ってるんだよ。

「・・ちゃんと土曜日予定開けてる?」麗香はそう切り出した、何だ そのことか。

「大丈夫、しっかり開けてあるから」「ホントっ?絶対だよっ?」「ああ、埋め合わせすら出来ないようじゃ男としてダメだからな」俺はそう言って席へと向かった、大樹は背後で「何だ何だ・・結局どっちなんだ・・」とか意味不明な事を呟いていたが無視、確実に瞬間的に無視。

「HR始めんぞゴラァ!」「・・・・」その日も先生は意味の分からないノリで教室へ入ってきた。


 人間、考え事や悩み事があると時間が過ぎていく感覚が早く感じるものである。

それは俺にも当てはまっていて、実際心の中は心結のキスの件がブクブクと意味もなく膨らんでいる。

「(はぁ・・・)」時は放課後、俺は大樹や麗香・涼花達と別れて一人心結の元へ。

見舞いを口実に家へ上がらせてもらうのだ、昔からの付き合い故に心結と俺の父母関係は仲がいい。

「さ、真相を知る時だ」二度目のセリフと共に俺は心結の家のインターホンを押した。

ピンポーン、やけに音が耳に残る嫌な感覚に陥りながら俺は扉が開くのを待った。

数秒後、ガチャリという音と共に一人の女性の顔が現れた。

見た目には20歳位に見える張りのある肌、顔のパーツのバランスが完璧で、まさに美女といった感じの女性。

それは心結の母である、姫岸舞香さんだ。

「あら、秋良君じゃない 久しぶり」「どうも、ご無沙汰してます」適当に挨拶を済ませて俺は話を切り出す。

「えーっと、心結が休んだって事でお見舞いに」「あらあら、悪いわねぇ」舞香さんはコロコロと笑いながら俺を家にあげてくれた。

数年前にも来た事のある心結の家は、その時と変わらない、懐かしい印象を抱かせる。

「心結は2階よ、って秋良君は分かるわよね」舞香さんが律儀に階段を指差す。

「はい、どうもです」俺は礼をして階段を上る、背後で「うふふ、若いっていいわね」とか聞こえたような気がするけど気のせいだろう。

2階には部屋が3つある、一つは倉庫みたいに不要になった玩具や本を保管する部屋、もう一つは心結の姉の部屋、そして心結の部屋の3つだ。

「ここだな」心結の部屋の前には平仮名で「みゆう」と書かれたルームプレートがある、昔のままだ。

「・・・」一度深呼吸し、気持ちを落ち着かせる そして俺は扉に向かって拳を軽く2回叩きつける。

コンコン、と。

 

 「・・・はふぅ」部屋の中では、珍しく熱でぼーっとしている心結がいた。

「あぁ・・あっくん来ちゃうかな」心結は心臓が早く強く脈打つのに気づく。

「心の準備が出来てないよ・・・」心結がボソっと呟くのと同時に違う音が聞こえる。

コンコン、それはノックだ。

「はーい?」心結はヨロヨロとおぼつかない足運びで扉の前までいって、扉を開ける。

するとそこには・・・。

「・・・あっくん?」目の前には今心を支配する人物、桜田秋良が立っていた。


 「心結、体調はどうだ?」目の前の心結に健康状態の有無を聞く俺。

「あ・・大丈夫、熱も引いたみたいだし」アハハと心ない笑いをする心結、やっぱり何かおかしい。

「入ってもいいか?」「え・・っと、いいよ」少し悩んだ後に、了解をくれた。

「おじゃまします」俺は扉を開けて心結の部屋に入った。

そこは昔とあまり変わっていなかった、ピンクとか赤とかの暖色系をベースに水色や黄緑といった淡い色を重ね合わせるように作られた壁は懐かしい感情を心に灯す。

ヌイグルミ等の子供っぽい趣味から、少女漫画やコミック・ゲームと少し大人な趣味へと変わっている事くらいが昔と違う唯一の点だろう。

「変わらないな」「うん、模様替えとかしてないからね」タンスやクローゼット、カーテン等のインテリアは多少変わっているものの、それ以外はあまり変わっていない。

「何年ぶりだろ?」「大体6年かな」今俺が高校一年だから、大体小学4年生位から来ていない計算だ。

「そっか・・・そうだ、心結 聞きたい事がある」俺は懐かしさに攫われ、忘れかけた本来の目的を思い出す。

「・・・なぁに?」ぼーっとしている顔で、妙に優しい声音で問う心結は何だか少し色っぽい。

着崩したパジャマ姿で少し汗ばんでいる心結の胸元は大きくはだけている、下着が見えないのが不幸中の幸いか。

「・・あのキスの件だが」「あれ・・ね」心結は降参したように、ゆっくりと語り始めた。

「あっくんはさ、幼馴染についてどう思う?」「どうって・・・」唐突な質問に答えが瞬間的に出ない俺。

「私はね、いつまでも永遠に強い絆や仲で結ばれている人達の事だと思ってるの、今もそう」心結の言葉から覇気が感じられない、か細く寂しさを感じさせる声はいつもの心結とは違っている。

「けど、現実はそうじゃない」「どういうことだ?」疑問に首を傾げる俺、俺達はいつも一緒じゃないか。

「あっくんは色んな女の子と仲良くし始めて、どんどん私から離れてく気がして、どうしようもない位悩んだ」「・・・」麗香や涼花と会話したりしている所を歯噛みしながら見守っていたというのか、心結は。

「そして、だったら強引にでもアクションを起こそうって・・そう思ってね・・」途切れとぎれになる心結の言葉、その途切れた所には「ひっく」と嗚咽をならす声が混じる。

「・・・バカだなぁ」「・・・え?」目の前で泣きじゃくる心結に、俺はゆっくりと語りかけた。

「いつ俺はお前を敬遠するようになった?いつから距離を取ろうとし始めた? 俺はそんなことはしてないだろ」「だ・・だけど・・」「それじゃ、お前は俺を縛り付けていれば気が済むのか?」諭すように、俺は心結へとゆっくりとした柔らかい口調で喋りかける。

「ち・・違うけど・・けど、やっぱり辛くて・・」「心結」俺は心結を見据えて一言こう言った。

「俺は、いつまでもお前の傍にいる、お前が俺を必要としなくなるその時までな」「あ・・あ・・あっくん・・!」いつもの強気な心結とは違う、目の前の心結は触れれば壊れそうな繊細な乙女だ、俺は泣きながら俺の胸へ飛びつく心結の頭を撫でた。

「大丈夫、安心しろ」「う・・うわぁぁぁん」それは、昔の俺達にも似ていた。

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