花火大会の埋め合わせ パート心結
それから1週間程で俺は退院した、賢治は殺人未遂で捕まった 当たり前だね当たり前。
で、俺はというと、花火大会というイベントをぐちゃぐちゃにしてしまった為に心結、麗香、愛華、涼花の1人1人のお願いを聞いてあげることになってしまった。
「金銭面でのビッグダメージはなし」という約束の元に彼女らと埋め合わせをすることとなった。
今日が7月12日金曜日、今週の土日が心結と涼花 来週が麗香と愛華 という日程を組んだ。
「不安しかねぇよ・・・」微妙に痛む右腕をさすりながら俺は自分の家へと帰宅した。
「そうだ・・・物置の整理しねぇと・・・」ヤクザの一件で忘れていたが、先週の土日には物置整理をするはずだったのだ。
「やっべー、母さんに叱られるかな・・」俺は急いで家へと入る、母さんは仕事で家を開けているらしい 愛華もまだ帰ってきていない。
「よし、偽装工作開始だ」制服から私服へとモデルチェンジし終わると同時に俺はリビングを抜け、階段下の扉を開ける。
中には幼少期のおもちゃや、アルバム・子供の頃の写真、ともかく沢山、それは沢山ごっちゃごちゃに詰め込まれた状態なのだ、それも結構掃除してないから埃かぶってるし。
「ゲホゲホ・・・んあ?」俺がむせながら中を確認しにいくと、足元でコッ と軽く木材っぽいものに足が当たる。
「何だこれ」それは木枠の写真立てだった、写真には6歳位の俺と同い年位の謎の女の子が写っている。
「誰・・だろ?」記憶の糸を辿るが結局何も思い出せない。
「ま・・・いっか、それより掃除掃除」俺は写真立てを二階の階段に寝かせるように置いて掃除機をかけ始める。
「ただいまー」「おー、おかえりぃ!?」何故か愛華は帰宅早々に俺の顔面にラリアットをかました。
「何すんだ!」「お小遣いUP・・・!」「えー・・・」ガチだったんだ、心配だからとかそう言う理由じゃなくてガチでお小遣い欲しかったんだ。
「まぁ、それは冗談で」「んじゃなんで蹴ったし!」「勝手にひとりで暴れて怪我するからでしょ」「う・・・」愛華の一言が心にグサっと刺さる、むう・・・何か罪悪感。
「ふん!」そっぽを向いて階段を駆け上がる愛華、あーあ・・また機嫌損ねちゃったよ。
「はぁ・・・」俺は脱力して掃除機を元に戻し、物置を閉め、写真立てを持って二階へ。
「まぁ、分かんないけど 飾っておくか」俺は机の上に写真を置いてその場をあとにした。
翌日。
「あっくん、待った?」「いや別に、2、3分位だから許容範囲内だよ」今日は心結に頼まれて買い物に付き合う事に。
「んじゃ、出かけましょ」「あ・・・ああ」俺は腕を引っ張られ、心結の後に続く。
俺達が目指しているのはありきたりな大型デパートだ、何でも洋服とか小物が買いたいらしい。
「3階が洋服売り場、4階が小物とかアクセサリ売り場なの」「へー・・・」デパートは7階建てで、1階1階が結構な広さだったりする。
「レッツゴー!」「静かにしてくれ・・・」薄手の半袖ティーシャツを着て、下に膝丈当たりまでのスカートを履いた心結は結構綺麗で、周囲の目を集めるのだが、この騒ぎぶりで大半が目をそらす。
まずは3階、洋服を2・3着買いたいそうだ 服なんてコスプレ衣装とかアッチ系じゃなきゃ何でもいいと思うんだが。
「うわぁー綺麗~」「ん、何見てんだ・・っておい」そこには何故かウェディングドレス、おいコラ 誰だデパートにウェディングドレス販売店置きやがったのは。
「・・・買わねぇぞ?」「知ってるもん!」ぷくっと頬を膨らませて少し怒った風にこっちを向く心結の瞳は微かながら笑っていた、やっぱあの事件は気にしてたんだな。
「こっちだよ、本命は」そこはよくある洋服チェーン店、カジュアルな服がバババーっと並んでいる。
ちなみにアクセサリ1つと洋服一着(自分が買う枚数の内最も安いやつ)を買うのが俺への罰らしい。
「これ可愛くない?」「あー・・可愛いんじゃないかな?」俺は適当に相槌を打つ、いやー・・・同年代の女子のショッピングに付き合ってる事自体あまり得意じゃないのに、服の査定までするとか どこの審査員だよ俺は。
「これにするっ」それから数十分程悩んだあまり、3着決定。
俺が買うのは白を基調に、水色や薄いピンクがラインや文様みたいに入っているワンピース(1990¥)らしい。
それ以外に買ったのは少し早い気がするがストールとカーディガン、今着ないのを今買ってどうするんだ。
「ふふっ♫」物凄い上機嫌でルンルンとしている心結、俺は荷物持ち係でもあります、はい。
そんなこんなで4階の小物・アクセ売り場へ。
「これ可愛い~」可愛いとか綺麗とか、女子の評価は一般的すぎるなぁー、もっと何かないの?
「これ買って」「早くね?」さっきとは違って数分で見つけた心結、あれは・・・指輪?
「バカ野郎、そんな大金ないわ」「へ?何言ってんの?」「・・・ほ?」「金額見てみ」「どれどれ・・・」定価950¥ 「安っ!?」目の前の指輪はダイヤとか入ってない銀のリングではあるものの、それなりに高そうな雰囲気だ。
「これなら邪魔になんないでしょ?」「ああ・・・」と言ってその指輪を二つ掴んでレジへ え?二つ?
「合計で1900になります」「あ・・はい」俺が2千円出してお釣りを受け取ると、指輪を俺へ渡してくる。
「ペアルック♫」「・・・罰ゲーム?」「違うっ!して欲しいの!」「?」ともかく何処にはめればいいんだ?
「薬指☆」「夫婦かっ!」「んじゃ・・・足の親指?」「なんで!?手の指にしろよせめて!」「んじゃ・・・中指は?」「うー・・む」カポ、あら あっさりはまりました。
「あ・・あれ?とれねぇ」「どんまーい、それ一生付けててね」「うぉい!?俺の中指死にますけど!」「しーらない」「・・・」そう言う心結も俺と同じ右手の中指にはめている、あれは落ちることもなく外れなくなることもなく、ピッタリのサイズだ。
「(ちぇ・・・ま、いいか どうせ血液は回るだろ)」俺は内心そんな事を考えながら心結の後を追いかける。
「はー・・疲れたねぇ」「だな」あの後、ゲームコーナーでクレーンゲームやホッケー等をゆっくりじっくり単能していると時間は結構過ぎており、デパート中に入る前が1時だったのに今は4時30分だ。
「はぁ、これでお前の用事は全部か?」「ううん、一つだけ残ってるの」「うぇ?一つ?今からじゃ遅いぞ・・」「大丈夫、一瞬で終わるから」「はい?」直後、俺の唇が塞がれた。
「っ!?」目の前には目を閉じて俺の唇を唇で塞ぐ心結の顔。
「じゃあね、あっくん」その間4秒、その後心結は脱兎のごとく逃げ去っていってしまった。
「・・・・」俺は自分の唇をなぞる、俺が・・・心結とキスしたっていうのか・・・。
「・・・・・・」言葉を失い、右手の指輪を眺め 「・・・はぁ」嘆息して家へ帰る、どうせあんなのは軽い悪戯、そうだそうだ 第一心結が俺におふざけ以外でキスするなんてありえん。
「そうだ・・そうだよな・・」無理に思い込ませるようにそう言いながらまだ明るい道を家へ向かって歩き出す。